吸収合併を検討されている方で、以下のようなお悩みはありませんか?
「吸収合併って言葉は聞くけれど、具体的にどのような意味?」
「吸収合併を進めたいが、何から手をつければよいかわからない…」
本記事では、吸収合併の基本から新設合併との違い、メリット・デメリットまで網羅的に解説します。
これから吸収合併を考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
なお、StockSun株式会社では、吸収合併の各段階に精通したスタッフが揃っており、面談準備や同席、条件交渉まで一貫して支援しています。
納得のいく形で吸収合併を進めたいとお考えの方は、ぜひStockSun株式会社へご相談ください。
目次
吸収合併とは、M&Aの手法の一つで、複数の会社が一つになる際に、一方の会社だけが残り、もう一方の会社は消滅する形態です。
主にグループ企業内の組織再編や、経営資源を特定の事業に集中させる目的で活用されます。
なお、吸収合併が完了した際は、会社法第921条に基づき、効力発生日から2週間以内に存続会社の変更登記と消滅会社の解散登記が必要です。
M&Aに関して、詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
関連記事:M&Aとは?主な目的や事業継承のデメリット・基本的な流れを徹底解説
参考:会社法921条
吸収合併と似ている「新設合併」は、すべての当事会社が解散し、新たに会社を設立する点が異なります。それぞれの特徴は以下の通りです。
吸収合併 | 新設合併 | |
会社の存続 | 一方の会社が存続 | すべての会社が消滅し、新会社を設立 |
手続き | 比較的簡素でスピーディー | 複雑で時間がかかる |
許認可 | 原則として引き継がれる | 新たに取得し直す必要がある |
イメージ | 吸収される側はネガティブな印象も | 対等な立場での統合をアピールしやすい |
吸収合併は手続きが比較的シンプルです。新設合併は対等なイメージを打ち出せる一方で、許認可の再取得に手間がかかる違いがあります。
吸収合併には、他のM&A手法にはないメリットがあります。
自社の状況と照らし合わせ、最適な選択肢か判断しましょう。
吸収合併の利点は、消滅会社の権利や義務を存続会社が丸ごと引き継げる点です。取引先との契約や従業員の雇用、事業に必要な許認可などが個別の手続き不要で自動的に移転します。
一つひとつの資産や契約を移す手間が省け、統合プロセスの簡素化が可能です。顧客や取引先との関係も維持しやすいため、事業への影響を最小限に抑えながら、スムーズな統合を実現できます。
二つ以上の会社が一つになると、「シナジー効果」が期待できます。互いの経営資源が統合され、業務の効率化やコスト削減が実現しやすくなるためです。
両社の販売網や顧客基盤を共有して売上を伸ばしたり、重複する管理部門を一つにまとめてコストを削減したりできます。また、互いの技術や人材などの強みを組み合わせて、新たなサービスや製品を開発し、競争力を高めることも可能です。
吸収合併は、株式の交換比率を1:1に設定する「対等合併」として実施できます。吸収合併にすれば、「吸収される」のようなネガティブなイメージを払拭し、社内外に「対等な立場での統合」だとアピールが可能です。
どちらかの会社が消滅する吸収合併では、従業員や株主が心理的な抵抗を感じる場合があります。しかし、対等合併の形をとると、反発を和らげ、従業員の士気を保ちやすくなります。企業文化を尊重しつつ統合を進めたいときにも選ばれる方法です。
吸収合併には多くのメリットがある反面、注意すべきデメリットも存在します。
上記のようなリスクを理解しておくと、吸収合併を進める際の判断や準備がしやすくなります。
吸収合併を成立させるには、株主総会での承認や債権者保護手続きなど、会社法で定められた多くのステップを踏む必要があります。手続きは専門知識を要し、複雑です。
また、法的手続きだけでなく、人事制度や情報システムなどの社内統合も進めなければならず、現場の負担は大きくなります。
上場企業同士の場合は、情報開示などの追加対応も求められるため、準備から完了までには相応の時間と労力がかかる点を覚悟しておく必要があります。
吸収合併では、消滅会社の株主に対し、対価として存続会社の株式を交付するのが一般的です。多額の買収資金を用意せずに済みますが、新たに株式を発行するため、既存株主の持株比率が低下する希薄化が起こります。
持株比率の低下は、一株あたりの価値が下がることや、経営への影響力を懸念する株主からの反発を招く可能性があります。上場企業では株価下落につながるリスクもあるため、合併比率の算定は専門家を交えて慎重に進める方がよいでしょう。
吸収合併は権利義務を丸ごと引き継ぐため、貸借対照表に載っていない「簿外負債」や、将来発生するかもしれない「偶発債務」も承継してしまいます。
未払い残業代や将来の訴訟リスクなどが含まれ、事前の調査(デューデリジェンス)だけでは完全に把握しきれない場合があります。合併後に想定外の費用が発生するリスクに備え、契約書に保証条項を設けるなどの対策が必要です。
デューデリジェンスに関して詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:DD(デューデリジェンス)とは?目的や行うタイミング、実施手順を3STEPで解説
ここでは、吸収合併を進める際の一般的な流れを11のステップで解説します。
各ステップを理解し、計画的に準備を進めましょう。
まず、当事会社間で合併条件を協議し、合意内容を「吸収合併契約書」にまとめます。契約書には、存続会社と消滅会社の商号・住所、効力発生日などを法律に沿って明記しなければなりません。
契約書案に関して、両社の取締役会で承認を得た後、正式に契約を締結します。契約が、以降のすべての手続きの基礎となります。
合併は会社の財産状況に影響するため、債権者を保護する手続きが必要です。官報などに合併の事実を公告し、債権者が1ヵ月以上の期間内に異議を述べられるようにします。
会社が把握している個別の債権者には、書面で直接通知(個別催告)を行います。期間内に債権者から異議がなければ、合併に同意したとみなされ、手続きを進めることが可能です。
株主や債権者が合併に関して適切に判断できるよう、関連資料を会社の本店に備え置くことが法律で義務付けられています。
備え置く書類は、吸収合併契約書の内容や合併対価の算定根拠を記した書面などです。
上記の書類は、株主総会の2週間前などの定められた日から、合併の効力発生後6ヵ月が経過する日まで、誰でも閲覧できる状態にしておく必要があります。
参考:会社法794条
吸収合併は株主の権利に大きな影響を及ぼすため、株主に対して合併に反対する機会を保障する必要があります。合併に反対する株主が持つ「株式買取請求権」で知らせなければなりません。
会社は、株主総会の20日前までに、株主に対して合併を行う旨を通知または公告します。株主は十分な情報を得た上で、総会での議決権行使や株式買取請求を判断できます。
参考:会社法797条
合併を正式に承認するための株主総会を開催するにあたり、法的な招集手続きを踏みます。開催日時、場所などを株主に送付します。
通知は、公開会社の場合は開催日の2週間前、非公開会社の場合は1週間前までの発送が必要です。
手続きを怠ると、株主総会の決議が無効になるおそれがあるため、確実に行わなければなりません。
参考:会社法第804条
招集手続きを経て株主総会を開催し、吸収合併契約を承認するための決議を行います。吸収合併は会社の根幹に関わる重要事項であるため、通常の決議より可決要件が厳しい「特別決議」が必要です。
特別決議では、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成がなければ可決されません。承認を得て、初めて会社として合併を正式に進められます。
株主総会で合併に反対した株主は、自身が持つ株式を公正な価格で会社に買い取るよう請求できます。合併によって不利益を受ける可能性のある少数株主を保護するための制度です。
請求期間は、効力発生日の20日前から前日までと定められています。会社側は、請求があった場合、株主と価格に関して協議し、株式を買い取る法的な義務を負います。
参考:会社法797条
事前に実施した公告・催告に対し、債権者から異議が申し立てられた場合、会社は対応しなければなりません。主な対応策は、債務を返済する「弁済」、あるいは不動産などの「担保の提供」です。
債権者の不安を解消し、同意を得る必要があります。もし債権者が納得しないまま手続きを進めると、後から合併の無効を訴えられるなど、法的なトラブルに発展する可能性があるため、誠実な対応が求められます。
参考:会社法第810条
吸収合併契約書で定めた「効力発生日」を迎えると、法的に合併が成立します。効力発生日をもって、消滅会社のすべての権利義務が、存続会社へ包括的に承継され、会計システムの統合や人事制度の統一など、社内的な統合実務が本格的に始まります。
合併の効力発生後も、手続きは続きます。会社は、合併に関する情報をまとめた「事後開示書類」を作成し、本店に備え置く義務があります。
書類には、効力発生日や承継した資産・負債の概要などの記載が必要です。株主や債権者が合併後の会社の状況を把握できるようにし、経営の透明性を確保するための措置です。書類は、効力発生日から6ヵ月間、誰でも閲覧できる状態にしておく必要があります。
参考:会社法801条
吸収合併の最終手続きは、法務局への登記申請です。効力発生日から2週間以内に、存続会社は資本金の変更などを登記する「変更登記」を、消滅会社は会社が消滅したことを登記する「解散登記」を、それぞれ申請します。
登記手続きが完了して初めて、吸収合併に関する一連の法的手続きがすべて終了し、合併が対外的に正式なものとして認められます。
吸収合併は、法務や税務など多岐にわたる専門知識を要する複雑なプロセスです。手続きで失敗を避けるためには、M&Aコンサルティング会社のような専門家の支援を受けるのが有効です。
専門家は、企業価値の評価や交渉戦略の立案など、あらゆる局面で高度な専門性と実務経験を発揮します。自社だけで対応しようとすると、法的な不備や予期せぬリスクを見逃す可能性があります。
M&Aに詳しいコンサルティング会社のサポートを受ければ、吸収合併の手続きをスムーズに進めやすくなります。
信頼できるM&Aコンサルティング会社の選び方は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:【2024年最新版】おすすめM&Aコンサルティング会社・サービス10選!選び方も解説
本記事では、吸収合併の基本的な仕組みや新設合併との違い、メリット・デメリット、具体的な手続きの流れや注意点までを詳しく解説しました。
実際の手続きは専門的な知識が求められる場面も多く、対応を誤ると法的なトラブルや想定外のコストにつながることもあるため、計画段階から慎重に進める必要があります。
自社の状況に応じた適切な判断と準備ができるよう、ぜひ参考にしてください。
吸収合併を進める中で不安や疑問を感じた場合は、専門家に相談するのも選択肢のひとつです。
StockSun株式会社では、吸収合併の各プロセスに詳しい担当者が在籍しており、面談準備から同席、条件調整まで幅広くサポートしています。
安心して吸収合併に取り組みたい方は、ぜひ一度StockSun株式会社までお問い合わせください。