既存事業が安定している企業であっても、成長を持続させるためには「新規事業の立ち上げ」が欠かせません。
市場の変化が激しい現代では、過去の成功モデルがいつまでも通用するとは限らず、常に新しい価値を生み出す力が企業の競争力を決定づけます。
しかし、「何から始めればいいのか」「アイデアをどう形にすればいいのか」「社内のリソースをどう確保するのか」といった課題に直面する企業は少なくありません。
本記事では、新規事業を成功に導くためのステップとポイントを、実践的な観点から解説します。
吉松誠二
マーケ戦略設計のプロフェッショナル
新卒でシーエー・モバイルに入社後、
サイバーエージェントのインターネット広告事業本部に配属(のちに転籍)。
デジタルマーケティングの営業・コンサルタントとして従事し、
不動産・人材・金融・電子書籍・比較サイトなど多岐に渡る顧客を担当。
2020年4月に独立し、現在までで
延べ300社以上の経営コンサル・マーケティングコンサルを担当。
BtoB・BtoC問わず幅広い支援を行っている。
日本一の店舗数を誇るパーソナルジムのCMOの経験や、
日本一の留学エージェント(年商規模)へ成長させた経験など多岐に渡り、
自身も億以上のバリエーションでM&A経験あり。
新規事業立ち上げの7ステップ
①新規事業を立ち上げる目的を明確にする
新規事業の立ち上げにおいて最初に重要なのは、「なぜ新しい事業をやるのか」を明確にすることです。
目的は大きく分けて次の3つに分類されます。
- 成長のための多角化:既存市場が飽和しており、新しい収益源を作りたい。
- 既存リソースの活用:保有する技術・人材・顧客基盤を別分野に応用したい。
- 社会変化への対応:環境変化やデジタル化など、時代の潮流に合わせて新しい価値を創出したい。
目的が曖昧なまま進めてしまうと、途中で意思決定がぶれたり、社内の理解が得られなかったりするリスクがあります。
②市場機会を見極める
新規事業は「作りたいもの」ではなく、「求められているもの」から考える必要があります。
以下の2つから始めてみましょう。
- 市場分析の基本フレーム:PEST分析、3C分析、SWOT分析など
- 顧客インサイトの発見:ユーザーインタビューやアンケートの実施、SNSの分析など
③アイデアを事業化するプロセス
この段階では完璧さよりも、「まず動けるか」を重視することがポイントです。
【アイデアの創出】
- 社内ワークショップやブレインストーミングを実施
- 異業種事例や海外トレンドをリサーチ
- 「自社の強み × 顧客課題 × 時代背景」の交差点を探す
【アイデアの評価】
- 市場性(需要の大きさ・成長性)
- 実現性(技術・人材・資金の観点)
- 収益性(収入モデル・コスト構造)
- 独自性(他社との差別化ポイント)
④仮説検証とスモールスタート
新規事業では、いきなり大規模投資を行うよりも、小さく始めて、早く学ぶことが成功の鍵です。
【MVP(Minimum Viable Product)の構築】
最小限の機能やサービスを形にして、市場の反応を確かめます。
- 仮サイトやプロトタイプを公開
- 限定顧客へのテスト提供
- SNS広告などで需要テスト
【検証指標の設定】
「どの数字を見れば仮説の正否が判断できるか」を事前に決めておきましょう。
(例:申込数、CVR、リピート率、口コミ数など)
⑤組織づくりと社内体制の整備
新規事業を推進するには、組織面での準備も不可欠です。
- 小規模・専門チームの設置:決裁スピードを上げ、試行錯誤を繰り返しやすくする。
- 既存事業とのバランス:本業とのリソース競合を避ける仕組みを整える。
- 社内文化の醸成:「失敗を恐れず挑戦する文化」を経営層が後押しする。
多くの新規事業が頓挫するのは「アイデアが悪いから」ではなく、「組織が動けないから」です。
⑥成長フェーズでの拡大戦略
仮説検証を経て、市場で一定の手応えが得られたら、次はスケールアップの段階です。
- マーケティング投資の拡大:広告・PR・SEO・SNSなどを強化し、顧客基盤を拡大。
- パートナー連携:他社との協業や外部リソース活用で成長を加速。
- 人材確保と育成:新規事業専任人材の育成と採用を並行して進める。
このフェーズでは「品質」「収益」「組織運営」のバランスを取りながら、持続的な成長を目指します。
⑦補助金・助成金の活用
新規事業の立ち上げには資金が必要不可欠ですが、国や自治体の補助金制度を活用すれば、初期コストを抑えながら挑戦が可能です。
- 事業再構築補助金:新分野展開・業態転換・ビジネスモデル変革を支援。最大で数千万円規模の補助が受けられる。
- ものづくり補助金:新サービス開発や生産性向上のための投資を支援。
- 小規模事業者持続化補助金:販路拡大やプロモーションに活用できる。
これらを上手に活用することで、Webサイト構築、EC事業立ち上げ、デジタル広告、システム導入などを低コストで実現できます。
まとめ
新規事業立ち上げのまとめ
新規事業の立ち上げは、企業にとって「未知への挑戦」であり、同時に「未来への投資」です。
成功する企業に共通しているのは、
- 明確な目的設定
- 顧客起点の発想
- スモールスタートと検証
- 組織としての柔軟性
- 補助金など外部資金の活用
これらを地道に積み上げている点です。
最初から完璧を目指す必要はありません。小さく試し、学び、改善を重ねることで、事業の芽は確実に育っていきます。
「やってみる」一歩こそが、新規事業成功への最大の原動力なのです。