自社ブランドの世界観を直接顧客に届け、長期的な関係を築く「D2C(Direct to Consumer)」。その成功の礎となるのが、ビジネスの根幹を支える「D2Cプラットフォーム」の選定です。しかし、ShopifyやBASE、ecforceなど数多くの選択肢が存在し、「自社に最適なプラットフォームはどれか」「何を基準に選べば失敗しないのか」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、EC/D2C領域のコンテンツマーケティングを専門とする株式会社StockSunが、D2Cプラットフォームの基礎知識から、事業フェーズ・目的別のおすすめサービス比較、そして失敗しないための選定ポイントまでを徹底解説します。さらに、プラットフォームを駆使して成功を収めているブランドの具体的な事例も深掘りします。この記事を読めば、D2C成功への最短ルートを歩むための、最適なプラットフォーム選定に関する知識がすべて手に入ります。
目次
D2Cビジネスを始めるにあたり、まず「D2Cプラットフォーム」が何を指すのか、従来のECサイトとどう違うのかを正確に理解しておくことが重要です。
D2C(Direct to Consumer)とは、メーカーやブランドが自社で企画・製造した商品を、卸売業者や小売店を介さず、自社のECサイトなどを通じて顧客に直接販売するビジネスモデルを指します。中間マージンを削減できるだけでなく、顧客データを直接収集・分析し、商品開発やマーケティングに活かせるのが大きな特徴です。顧客と直接つながることで、ブランドの世界観や想いを伝えやすく、熱量の高いファンコミュニティを形成しやすいというメリットもあります。
近年、消費者の価値観が「モノ消費」から「コト消費」「イミ消費」へと変化する中で、ブランドのストーリーや理念に共感して購入する傾向が強まっています。D2Cは、こうした時代の潮流にマッチしたビジネスモデルとして、市場規模を急速に拡大させています。
D2Cプラットフォームとは、D2Cビジネスを展開するために必要なECサイトの構築から、受注管理、在庫管理、顧客管理、マーケティング施策まで、一連の機能を備えたシステムやサービスのことです。単なる「商品を売る場所」ではなく、顧客とのあらゆる接点を管理し、ブランド体験を向上させるための「司令塔」としての役割を担います。
D2Cプラットフォームの主な機能
適切なプラットフォームを選ぶことは、業務効率化はもちろん、LTV(顧客生涯価値)の最大化、ひいては事業全体の成否を左右する極めて重要な経営判断と言えるでしょう。
従来のECサイトは、楽天市場やAmazonといった「ECモール」に出店する形態や、単に商品をオンラインで販売することを目的とした自社サイトが主流でした。これに対し、D2Cプラットフォームを活用したECサイト構築は、以下の点で大きく異なります。
項目 | 従来のECサイト | D2Cプラットフォーム |
---|---|---|
目的 | 商品の販売、売上拡大 | ブランド体験の提供、顧客との関係構築、LTV最大化 |
主役 | 商品 | ブランド、顧客 |
重視する指標 | CVR、短期的な売上 | LTV、NPS®︎(顧客推奨度)、顧客エンゲージメント |
デザインの自由度 | モールでは制限が多い。自社サイトでもテンプレート依存になりがち。 | 非常に高い。ブランドの世界観を自由に表現可能。 |
顧客データ | モールでは取得に制限あり。 | 自社で全て保有・活用可能。 |
つまり、D2Cプラットフォームは単に商品を売るためのツールではなく、顧客との深い関係性を築き、ブランドを育てていくための経営基盤そのものなのです。
D2Cプラットフォームは、提供形態によって大きく3つの種類に分けられます。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社のリソースや目指す方向に合ったものを選びましょう。
SaaS(Software as a Service)型は、クラウド上で提供されるECプラットフォームサービスです。自社でサーバーを用意する必要がなく、月額料金を支払うことで利用できます。ShopifyやBASE、ecforceなどがこのタイプに分類されます。
オープンソース型は、無償で公開されているソースコードを基に、自社でECサイトを構築するタイプです。代表的なものにEC-CUBEやMagento(現Adobe Commerce)があります。
パッケージ型は、ECサイト構築に必要な機能をパッケージとして提供するソフトウェアを購入し、自社のサーバーにインストールして利用するタイプです。ebisumartなどが該当します。
ここからは、数あるD2Cプラットフォームの中から、特におすすめの12サービスを「スタートアップ向け」「中〜大規模向け」「エンタープライズ向け」「BtoB-D2C向け」の4つのカテゴリに分けて、それぞれの特徴や料金、メリット・デメリットを詳しくご紹介します。
このカテゴリでは、初期費用を抑えつつ、D2Cの第一歩を踏み出せる手軽さと拡張性を兼ね備えたプラットフォームを厳選しました。
世界No.1シェア。デザイン性と拡張性でD2Cの王道へ
世界175カ国以上、数百万のストアで利用されている世界最大のSaaS型ECプラットフォーム。洗練されたデザインテンプレートと、「Shopify App Store」で提供される8,000種類以上の豊富なアプリ(拡張機能)により、自社の成長に合わせて機能を追加していけるのが最大の魅力です。越境ECにも標準で対応しており、将来的な海外展開も視野に入れられます。
初期・月額0円。誰でも簡単にネットショップが始められる
「お母さんも使える」をコンセプトに、専門知識がなくても誰でも簡単にネットショップを開設できる手軽さが魅力のプラットフォームです。初期費用・月額費用が無料で、商品が売れた時にはじめて手数料が発生する料金体系のため、リスクを抑えてD2Cを始めたい個人事業主やスモールビジネスに最適です。必要な機能を「BASE Apps」で追加していくことで、ストアをカスタマイズできます。
デザイン性と操作性を両立。実店舗との連携もスムーズ
BASEと並んで人気の高い、無料から始められるプラットフォーム。洗練されたデザインテンプレートが多く、初心者でも簡単におしゃれなストアが作れます。POSレジ機能「STORES レジ」と連携すれば、ネットショップと実店舗の在庫や売上を一元管理できるため、オムニチャネル展開を目指す事業者にもおすすめです。
サポート体制が充実した高機能カート
GMOメイクショップ株式会社が提供するSaaS型プラットフォームで、651機能という業界トップクラスの機能数を標準搭載しており、売上を伸ばすための細やかな設定が可能です。電話サポートも充実しており、EC運営で困った際に相談しやすい体制が整っているのも大きな魅力です。
このカテゴリでは、新規顧客獲得だけでなく、LTVを最大化するためのCRM機能やマーケティング機能に強みを持つプラットフォームをご紹介します。
広告運用とCRMに特化。売上向上を追求するD2Cの最終兵器
D2C・ECの売上向上に特化したSaaS型プラットフォーム。特に広告運用との連携やLTV最大化のためのCRM機能に強みを持ち、急成長中のD2Cブランドが多く採用しています。コンバージョン率を高めるためのフォーム一体型LPや、顧客属性に応じたセット販売など、売上を伸ばすための機能が豊富に実装されています。
アパレル業界に強い。顧客体験(CX)を重視したサイト構築
稼働実績2,900店舗以上、特にアパレルやファッション業界での導入実績が豊富なプラットフォームです。顧客一人ひとりに合わせた体験を提供するための機能が充実しており、実店舗との連携(オムニチャネル)にも強いのが特徴。「ファンを創る」ことを重視したサイト設計が可能です。
カスタマイズ性とセキュリティに定評のあるクラウドEC
SaaSのメリット(常に最新、インフラ管理不要)とパッケージのメリット(カスタマイズ性)を両立した「クラウドECプラットフォーム」。年商1億円以上の大規模ECサイトでの導入実績が豊富で、週に1回のペースでシステムの無料アップデートが行われるため、常に最新かつ安全な環境でECを運営できます。
年商数十億円以上の大規模なビジネスや、グローバル展開、複雑な要件に対応するためのプラットフォームです。
日本発のオープンソース。35,000店舗以上が利用する圧倒的実績
株式会社イーシーキューブが開発・提供する、日本で最も利用されているオープンソースのEC構築パッケージ。無料でダウンロードでき、自由にカスタマイズできるのが最大の魅力です。豊富なプラグインで機能拡張も可能で、開発パートナー企業も多いため、カスタマイズの相談がしやすい環境です。
グローバル基準のエンタープライズ向けEC基盤
Adobe社が提供する、世界的に高いシェアを誇るECプラットフォーム。元々はオープンソースの「Magento」として知られていました。BtoC、BtoB、複数ブランド、複数国展開など、複雑で大規模なビジネス要件にも対応できる柔軟性と拡張性が特徴です。Adobeの他のマーケティングツールとの連携も強力です。
数多くの選択肢の中から、自社にとって最適な一つを見つけるためには、明確な比較基準を持つことが不可欠です。ここでは、プラットフォーム選定で絶対に外せない5つのポイントを解説します。
まず考えるべきは、「現在の事業規模」と「将来目指す規模」の両方です。スモールスタートだからといって、機能が限定的すぎるプラットフォームを選ぶと、事業が成長した際にシステムを乗り換える必要が出てきます。乗り換えには多大なコストと時間がかかるため、将来的な事業拡大(取扱商品数の増加、会員数の増加、流通額の増加)に耐えうる拡張性があるかを見極めましょう。
【チェックリスト】
D2Cの核心は、ブランドの世界観を顧客に伝えることです。プラットフォームによって、デザインのカスタマイズ範囲は大きく異なります。テンプレートが豊富でも、レイアウトの変更に制限があったり、HTML/CSSの知識がなければ修正できなかったりする場合があります。自社のブランドイメージをどこまで忠実に再現できるか、デモサイトや導入事例を参考にしながら確認しましょう。
【チェックリスト】
D2Cは「作って終わり」ではありません。集客し、購入してもらい、リピーターになってもらうまでの一連のマーケティング活動が不可欠です。そのため、プラットフォームにどのようなマーケティング機能や分析機能が標準搭載されているか、または追加できるかは非常に重要です。
【チェックリスト】
事業が拡大するにつれて、MA(マーケティングオートメーション)ツール、CRMツール、会計ソフト、倉庫管理システム(WMS)など、様々な外部システムとの連携が必要になります。APIが公開されていれば、システム間のデータ連携をスムーズに行うことができ、業務効率が飛躍的に向上します。将来的な連携の可能性も踏まえ、APIの提供状況や連携実績を確認しておきましょう。
【チェックリスト】
プラットフォームのコストは、初期費用や月額費用だけではありません。販売手数料や決済手数料、アプリの利用料など、売上に伴って変動するコストも考慮し、トータルでシミュレーションすることが重要です。また、問題が発生した際に迅速に対応してくれるサポート体制の有無も、安定した店舗運営のためには欠かせません。特にEC運営の初心者は、電話やチャットで気軽に相談できるサポートがあると安心です。
【チェックリスト】
理論だけでなく、実際にD2Cプラットフォームを効果的に活用し、ビジネスを成功させている企業の事例を見ていきましょう。彼らがなぜそのプラットフォームを選び、どのように活用しているのかを深掘りします。
【ブランド概要】
COHINAは、「小柄な女性に、本当に似合う服を。」をコンセプトに、身長150cm前後の女性向けアパレルを展開するD2Cブランドです。創業者が自身の実体験から感じた「サイズが合わない」という切実な悩みを解決するために立ち上げられました。[出典: COHINA公式サイト](https://cohina.net/)
【プラットフォーム選定と活用法】
COHINAが選んだのは、世界No.1シェアを誇るShopifyでした。選定理由は、非エンジニアでもサイトの更新や改修が容易であること、そして豊富なアプリによる高い拡張性です。これにより、事業の成長に合わせてスピーディーに施策を実行できる環境を整えました。
COHINAの成功を語る上で欠かせないのが、Instagramのライブ配信を徹底的に活用した顧客とのコミュニケーションです。ほぼ毎日行われるインスタライブでは、新作商品の紹介はもちろん、ユーザーからのコメントにリアルタイムで答え、サイズ感やコーディネートの悩みに寄り添います。この双方向のコミュニケーションを通じて得られた顧客の声を、商品企画に即座にフィードバック。顧客自身がブランドを育てる「共創」のサイクルを生み出しています。
ShopifyとInstagramのシームレスな連携により、ライブ配信で盛り上がった熱量をそのまま購買へと繋げる導線が確立されています。この顧客との深いエンゲージメントこそが、COHINAが熱狂的なファンコミュニティを築き、急成長を遂げた最大の要因です。
【ブランド概要】
VALXは、ボディビル・パワーリフティング界のレジェンドである山本義徳氏が監修する、プロテインやサプリメントを開発・販売するフィットネスブランド。「本物を追求し続ける」という理念のもと、品質に徹底的にこだわった商品を提供しています。[出典: VALX公式サイト](https://valx.jp/)
【プラットフォーム選定と活用法】
VALXが事業の急成長を支える基盤として選んだのが、D2Cの売上向上に特化したecforceです。ecforceは、広告効果の精密な分析機能や、LTVを最大化するためのCRM機能に強みを持っています。
VALXの戦略は、山本義徳氏のYouTubeチャンネルという強力なコンテンツを軸に集客し、ecforceの機能をフル活用して顧客のLTVを高めていくというものです。例えば、初回購入者に対してステップメールを配信し、商品の効果的な使い方やトレーニング情報を届けることで継続利用を促進。また、顧客の購入履歴データを分析し、一人ひとりに最適なタイミングでアップセルやクロスセルの提案を行うなど、データに基づいたきめ細やかなアプローチを実践しています。
ecforceの強みである分析機能によって、どの広告経由の顧客が優良顧客になりやすいかを可視化し、広告投資の最適化も図っています。強力なコンテンツマーケティングと、データドリブンなCRM戦略。この2つをecforceというプラットフォーム上で噛み合わせることで、VALXは短期間での圧倒的な成長を実現しました。
【ブランド概要】
1965年創業の土屋鞄製造所は、ランドセル作りから始まった老舗の皮革製品ブランドです。職人の手仕事による丁寧なものづくりと、時代を超えて愛される普遍的なデザインで、多くのファンを魅了し続けています。
【プラットフォーム活用の歴史と成功要因】
土屋鞄製造所は、EC黎明期からオンラインでの販売に力を入れてきました。長年、アパレルやライフスタイルブランドに強いfutureshopを活用し、ECサイト上でもブランドの世界観や製品の背景にあるストーリーを丁寧に伝えることで、オンラインにおける顧客体験価値を高めてきました。futureshopの柔軟なデザインカスタマイズ機能や、顧客との関係性を深めるCRM機能を活用し、実店舗と変わらない「おもてなし」をWeb上で実現していたのです。
近年、さらなるグローバル展開やシステム連携の柔軟性を求め、Shopify Plusへとプラットフォームを移行しましたが、futureshop時代に培った「ECサイトを単なる売り場ではなく、ブランドと顧客のコミュニケーションの場として育てる」という思想は、今も変わらず受け継がれています。
この事例から学べるのは、プラットフォームの機能性だけでなく、それをどう活用してブランド価値を高めるかという「戦略」の重要性です。土屋鞄製造所は、プラットフォームの特性を最大限に活かし、オンラインでも顧客との絆を深めることに成功した好例と言えるでしょう。
ここまで様々なプラットフォームを紹介し、選び方のポイントを解説してきましたが、「情報が多すぎて、結局どれが自社に最適なのか判断できない」「選定はできても、その後の売上の伸ばし方が分からない」と感じている方も少なくないはずです。D2Cプラットフォーム選びは、それほどまでに複雑で、事業の未来を左右する重要な決断なのです。
初期費用や月額費用の安さだけでプラットフォームを選んでしまうケースです。最初は良くても、事業が成長するにつれて「やりたい施策が機能的に実現できない」「外部ツールと連携できず手作業が増える」といった壁にぶつかります。結果として、売上を伸ばすチャンスを逃したり、不要な人件費がかさんだりしてしまいます。
①とは逆に、「大は小を兼ねる」と考え、オーバースペックな高機能プラットフォームを導入してしまうケースです。多くの機能を全く使いこなせないまま、高い月額費用だけを払い続けることになり、収益を圧迫します。自社の事業フェーズやリソースに見合わない選択は、大きな失敗につながります。
このような失敗を避け、D2Cビジネスを成功に導くためには、客観的な視点を持つ専門家の知見を活用することが最も確実な方法です。私たち株式会社StockSunは、特定のプラットフォームに縛られない完全に中立な立場で、貴社のビジネスモデル、商材、事業フェーズ、将来の展望を深くヒアリングした上で、最適なプラットフォームを選定します。
創業7年で累計1,910社の支援実績から蓄積された豊富なノウハウに基づき、「なぜこのプラットフォームが最適なのか」を論理的にご提案。成功パターンも失敗パターンも知り尽くしているからこそ、貴社が陥りがちな落とし穴を回避し、最短ルートで成功へと導きます。
StockSunの強みは、プラットフォームの選定・構築だけで終わらないことです。D2C事業の成功には、サイト構築後の集客(SEO、広告運用、SNS)、顧客育成(CRM)、データ分析といった、あらゆるWebマーケティング施策が不可欠です。
StockSunには、通過率1%以下の厳しい基準をクリアした、各分野のプロフェッショナルが64名以上在籍しています。貴社の課題に応じて最適なチームを編成し、戦略立案から実行までをワンストップで支援。領域を横断した一貫性のある施策で、事業全体のグロースにコミットします。
また、従来の会社で問題になりがちな「担当者ガチャ」のリスクもありません。実績や得意分野が全て公開された認定パートナーの中から、貴社が直接担当者を指名することも可能です。
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