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D2Cの立ち上げ方完全ガイド|7ステップの成功ロードマップと失敗しないための10の秘訣

更新日

「自分たちの想いが詰まった商品を、直接お客様に届けたい」
近年、そんな想いを実現するビジネスモデルとして「D2C(Direct to Consumer)」が大きな注目を集めています。しかし、その一方で「何から始めればいいのか分からない」「立ち上げたものの、うまくいかない」といった声が多いのも事実です。

D2Cの立ち上げは、単にECサイトを作って商品を並べるだけではありません。ブランドの魂となるコンセプト設計から、熱狂的なファンを生み出す顧客体験の構築まで、そのプロセスは多岐にわたり、専門的な知識と戦略が不可欠です。

この記事では、株式会社StockSunのコンテンツマーケティングチームが、EC/D2C領域で培ってきた知見を基に、D2Cブランド立ち上げの全ステップを網羅的に解説します。成功事例の分析から、失敗を避けるための具体的な秘訣まで、これ一本でD2C立ち上げの全体像が掴める「完全ガイド」です。

戸田峻太郎

この記事の著者

戸田峻太郎

戸田峻太郎

EC事業を年商10億以上に育てるプロ

ECグロースの専門家。
DeNA・スリーミニッツ・ココナラで 15年/年商数百億規模のECを指揮 し、年間10億円超のマーケティング投資を統括。
スリーミニッツ時代のeimy istoireでは 月商1,500万→2億円 へ急成長を2年間で牽引。その他複数D2Cブランドを数億規模に成長させる。

2023年11月に独立後は 「EC構築~集客〜サイト改善~CRM」を一気通貫コンサル を提供し、売上とROIを同時に最大化。
EC企業のマーケティング支援・企業の生成AI活用顧問を務める。
2024年には世界的なMAツール「Braze」で日本の年間No.1 を個人で受賞(Marketing Leader of the Year)
2025年より StockSun認定パートナーとして活動領域を拡大中。

目次

D2Cとは?今さら聞けない基礎知識

D2Cの立ち上げ方を解説する前に、まずは「D2Cとは何か」という基本的な部分を正確に理解しておく必要があります。従来のビジネスモデルとの違いや、メリット・デメリットを把握することが、成功への第一歩です。

D2Cと従来の通販・ECとの違い

D2C(Direct to Consumer)とは、メーカーが自社で企画・製造した商品を、卸売業者や小売店を介さずに、自社のECサイトなどを通じて消費者へ直接販売するビジネスモデルを指します。

従来の通販・ECモデルとの最も大きな違いは、「流通チャネル」「顧客との関係性」にあります。

▼ビジネスモデルの比較

  • 従来型(BtoBtoC):メーカー → 卸売 → 小売 → 消費者
    メーカーは主に卸売業者や小売店(BtoB)と取引します。消費者の顔は直接見えにくく、販売価格やプロモーションは小売店に依存する側面が大きくなります。Amazonや楽天市場などのプラットフォームに出店するのも、広義ではこのモデルに近いと言えます。
  • D2C型(DtoC):メーカー → 消費者
    メーカーが自ら「販売者」となり、消費者と直接(Direct)繋がります。これにより、あらゆるデータを自社で蓄積・活用でき、顧客と密接な関係を築くことが可能になります。

D2Cは単なる「メーカー直販」を意味する言葉ではありません。顧客と直接繋がることで得られるデータを活用し、ブランドの世界観やストーリーへの共感を軸に、顧客と長期的な関係を築いていくことこそが、D2Cの本質と言えるでしょう。

D2C事業の3つのメリット

D2Cモデルを採用することで、企業は以下のような大きなメリットを享受できます。

1. 収益性の高さと価格決定の自由度

D2Cでは、卸売業者や小売店への中間マージンが発生しません。その分、利益率を高めることが可能です。また、自社で販売価格をコントロールできるため、値下げ競争に巻き込まれることなく、ブランド価値に基づいた価格設定ができます。削減したコストを商品開発やマーケティングに再投資し、さらなるブランド価値向上を目指す好循環を生み出すことも可能です。

2. 顧客との直接的な関係構築とデータ活用

自社ECサイトを通じて、顧客の年齢・性別といったデモグラフィック情報から、購入履歴、サイト内での行動履歴(どのページをどれくらい見たかなど)まで、詳細なデータを直接収集できます。これらの一次データは、顧客理解を深めるための貴重な資産です。
例えば、「特定の商品Aを購入した顧客は、3ヶ月後に商品Bをリピート購入する傾向がある」といったデータが分かれば、適切なタイミングで商品Bをおすすめするメールを送る、といったパーソナライズされたマーケティング施策が可能になります。SNSやメルマガを通じて直接コミュニケーションを取ることで、顧客の声を商品開発やサービス改善に活かし、顧客ロイヤルティを高めることにも繋がります。

3. ブランディングの自由度とスピード感

D2Cでは、ブランドの世界観を表現する場(ECサイト、SNS、同梱物など)をすべて自社でコントロールできます。商品の魅力だけでなく、創業者の想いやブランドストーリーを伝えることで、機能的価値だけではない「情緒的価値」を顧客に提供し、強い共感を呼ぶことができます。また、新商品のテスト販売やキャンペーンの実施など、市場の反応を見ながらスピーディーに意思決定し、実行に移せる点も大きな強みです。

知っておくべきD2C事業の2つのデメリット

多くのメリットがある一方で、D2Cには知っておくべきデメリットも存在します。

1. 自社で全てを担う必要がある

D2Cは、その名の通り「Direct」にビジネスを行うため、従来は他社が担っていた業務もすべて自社で行う必要があります。

  • マーケティング・集客:ブランドの認知度向上のための広告運用、SNS運営、SEO対策など
  • ECサイト構築・運営:サイトのデザイン、コーディング、日々の更新、システムメンテナンス
  • 受注・CS対応:注文処理、問い合わせ対応、返品・交換対応
  • 物流(フルフィルメント):在庫管理、梱包、発送業務

これらの業務をすべて自社でカバーするには、幅広い専門知識とスキルを持つ人材が必要です。リソースが限られるスタートアップにとっては、大きな負担となる可能性があります。

2. 初期段階での集客コスト

Amazonや楽天市場のような大手プラットフォームには、すでに多くのユーザーが訪れる「集客力」があります。しかし、自社で立ち上げたECサイトには、当然ながら最初は誰も訪れません。ブランドを知ってもらい、サイトに顧客を呼び込むためには、Web広告やインフルエンサーマーケティングなど、相応の初期投資が必要です。認知度がゼロの状態から顧客を獲得していく難易度は、決して低くありません。

【7ステップ】D2Cブランド立ち上げの成功ロードマップ

ここからは、D2Cブランドを立ち上げるための具体的な手順を7つのステップに分けて解説します。このロードマップに沿って進めることで、抜け漏れなく、成功確率の高い立ち上げ準備が可能になります。

Step1.【構想】ブランドコンセプトと事業計画の策定

すべての土台となる、最も重要なステップです。ここでブランドの「軸」を固めなければ、その後の全ての施策がブレてしまいます。

ブランドコンセプトの策定

「誰の、どんな課題を、どのように解決するのか」を定義し、ブランドの存在意義を明確にします。以下の要素を言語化していきましょう。

  • WHY(なぜやるのか?):ブランドの存在意義、ビジョン、ミッション。創業者の原体験などが強力なストーリーになります。
  • WHO(誰に届けるのか?):ターゲット顧客の具体的な人物像(ペルソナ)。年齢、性別、職業、ライフスタイル、価値観、悩みなどを詳細に設定します。
  • WHAT(何を提供するのか?):商品の具体的な内容と、それによって顧客が得られる価値(ベネフィット)。単なる機能ではなく、その商品を使うことで顧客の生活がどう豊かになるのかを考えます。
  • HOW(どのように提供するのか?):ブランドの世界観(トーン&マナー)、コミュニケーションの方法、価格帯などを決定します。

事業計画の策定

コンセプトを具体的な数値計画に落とし込みます。最低でも以下の項目は策定しましょう。

  • 市場・競合分析:3C分析などのフレームワークを活用し、市場の規模や成長性、競合ブランドの強み・弱みを分析し、自社の立ち位置を明確にします。
  • 売上計画:客単価、販売数、コンバージョン率(CVR)、集客数などのKPIを設定し、現実的な売上目標を立てます。
  • 費用計画:商品原価、サイト構築・維持費、人件費、広告宣伝費、物流費など、必要なコストをすべて洗い出します。
  • 資金計画:自己資金で賄うのか、融資や出資を受けるのか。キャッシュフローが滞らないよう、綿密な計画が必要です。

この段階で専門家の視点を入れることで、計画の解像度を格段に上げることができます。

Step2.【商品】コンセプトを体現する商品開発

ブランドコンセプトを具現化した商品を作ります。D2Cにおいて商品は、単なる「モノ」ではなく、ブランドの世界観を伝える最も重要なメディアです。

  • 製造方法の決定:自社で製造するのか、OEM(相手先ブランド名製造)やODM(相手先ブランドによる設計・製造)を利用するのかを決定します。品質、コスト、ロット数などを考慮して最適なパートナーを選定しましょう。
  • 品質と原価のバランス:高品質を追求するあまり原価が高くなりすぎると、事業として成り立ちません。コンセプトを実現できる品質と、適切な利益を確保できる原価のバランスを見極めることが重要です。
  • パッケージデザイン:商品は顧客が最初に手にするブランドの体現者です。開封体験(アンボクシング)がSNSでシェアされることも多いため、パッケージデザインは非常に重要です。ブランドの世界観が伝わるデザインを追求しましょう。

Step3.【販売】ECサイト・プラットフォームの構築

顧客が商品を認知し、購入するための「お店」となるECサイトを構築します。選択肢は多岐にわたりますが、D2Cでよく利用されるのは以下の3つのタイプです。

1. ASPカート(Shopify, BASE, STORESなど)

最も手軽に始められる方法です。サーバーの準備やシステムの専門知識がなくても、デザインテンプレートを選び、商品情報を登録するだけでECサイトを開設できます。特にShopify(ショッピファイ)は、デザインのカスタマイズ性が高く、豊富な拡張機能(アプリ)で機能を自由に追加できるため、本格的なD2Cブランドの多くが採用しています。

▼主要ASPカート比較

サービス名特徴月額費用(目安)向いている事業者
Shopify世界No.1シェア。デザイン・拡張性が高く、本格的なストア構築が可能。越境ECにも強い。$33~本格的に事業を成長させたいスタートアップ~大企業
BASE初期費用・月額費用が無料で始められる。操作が簡単で初心者向け。0円~個人、スモールビジネス、初めてECを始める方
STORESBASEと同様に手軽に始められる。決済手数料が比較的安い。0円~個人、スモールビジネス

2. ECパッケージ

ECサイトに必要な機能をパッケージ化したソフトウェアを自社サーバーにインストールして構築する方法です。ASPカートよりもカスタマイズの自由度が高いですが、構築・運用には専門知識とコストがかかります。

3. フルスクラッチ

ゼロから完全にオリジナルのECサイトを開発する方法です。最も自由度が高いですが、開発費用は数千万円以上になることもあり、大規模事業者向けの選択肢です。

多くのD2Cブランドは、まずShopifyなどのASPカートでスモールスタートし、事業の成長に合わせて機能を追加したり、より上位のプランに移行したりする方法を選択しています。

Step4.【集客】見込み顧客との最初の接点を作る

ECサイトが完成したら、次はその存在を知ってもらい、顧客を呼び込む必要があります。D2Cの集客方法は多岐にわたりますが、代表的なものをいくつか紹介します。

  • SNSマーケティング:Instagram, X (旧Twitter), TikTokなどでブランドの世界観を発信し、ファンを形成します。特にビジュアルが重要な商材(アパレル、コスメ、食品など)ではInstagramとの相性が抜群です。ライブ配信などで顧客と双方向のコミュニケーションを図ることも有効です。
  • Web広告:リスティング広告(検索連動型広告)やSNS広告(Instagram広告, Facebook広告など)を活用し、ターゲット層に直接アプローチします。少額から始められ、費用対効果を測定しやすいのがメリットです。
  • インフルエンサーマーケティング:ブランドのターゲット層と親和性の高いインフルエンサーに商品を紹介してもらい、認知度と信頼性を高めます。
  • コンテンツマーケティング(SEO):ブログ記事などで顧客の悩みに寄り添う有益な情報を提供し、検索エンジンからの流入を狙います。効果が出るまでに時間はかかりますが、資産性の高い集客手法です。
  • PR・プレスリリース:新商品の発売やブランドの取り組みなどをメディアに取り上げてもらうことで、社会的な信頼性を獲得します。

これらの施策を単体で行うのではなく、ブランドのフェーズやターゲットに応じて組み合わせて実行することが重要です。どの手法が最適かを見極めるには、マーケティングの専門知識が求められます。

Step5.【体験】購入体験の向上(CX)とフルフィルメント

D2Cにおいて、顧客体験(CX = Customer Experience)はブランドの生命線です。商品が顧客の元に届き、利用するまでの一連の体験すべてがブランド価値を左右します。

購入体験の向上

ECサイトでのストレスのない購入プロセスはもちろんのこと、決済方法の充実も重要です。クレジットカード決済だけでなく、コンビニ後払いやキャリア決済、ID決済(Amazon Payなど)といった多様な選択肢を用意することで、カゴ落ち(商品をカートに入れたまま離脱すること)を防ぎます。

フルフィルメントの整備

フルフィルメントとは、商品の受注から決済、在庫管理、ピッキング、梱包、発送、そして返品・交換対応までの一連の業務プロセスを指します。この部分の品質が低いと、顧客満足度は大きく低下します。

  • 梱包(アンボクシング体験):段ボールを開ける瞬間のワクワク感を演出します。ブランドメッセージを記載したサンクスカードを同封したり、商品を丁寧に包んだりする工夫が、顧客の感動を生み、SNSでのシェアに繋がります。
  • 物流倉庫:事業が拡大すると、自社での発送作業は限界を迎えます。早い段階で、品質の高い物流代行サービス(3PL)を選定しておくことが重要です。

Step6.【育成】顧客との関係を深めるCRM

D2Cの成功は、いかにリピート顧客(ファン)を増やせるかにかかっています。新規顧客の獲得には、リピート顧客の維持に比べて5倍のコストがかかるとも言われています。そこで重要になるのがCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)です。

  • メルマガ・LINE公式アカウント:購入者に対して、新商品の案内やセール情報、ブランドの裏側ストーリーなどを配信し、継続的な接点を持ちます。購入金額や頻度に応じて配信内容を変える(セグメント配信)と、より効果的です。
  • SNSでのコミュニケーション:SNSでのコメントやDMに丁寧に返信したり、ユーザーの投稿(UGC:User Generated Content)を紹介したりすることで、顧客との絆を深めます。
  • ロイヤルティプログラム:会員ランク制度やポイントプログラムを導入し、優良顧客を大切にする姿勢を示すことで、長期的なファンになってもらいます。
  • 同梱物:商品と一緒に送る冊子や手紙で、商品の使い方やブランドの想いを伝えることも有効なCRM施策です。

Step7.【分析】データに基づいた改善とグロース

D2Cは「立ち上げて終わり」ではありません。むしろ、立ち上げてからが本当のスタートです。Step1で立てた事業計画のKPIを日々モニタリングし、データに基づいて改善を繰り返していく「グロース」のフェーズに入ります。

分析ツールを活用し、以下のような主要KPIを定点観測しましょう。

  • CVR(コンバージョン率):サイト訪問者のうち、何%が購入に至ったかを示す指標。
  • CPA(顧客獲得単価):新規顧客を1人獲得するためにかかった広告費。
  • LTV(顧客生涯価値):1人の顧客が取引期間中に企業にもたらす総利益。D2Cビジネスの最重要指標の一つ。
  • ROAS(広告費用対効果):広告費に対してどれだけの売上が得られたかを示す指標。

これらのデータを分析し、「なぜCVRが低いのか?」「どの広告チャネルのCPAが良いのか?」といった課題を発見し、サイト改修や広告運用の最適化といった改善策を実行し続けます。

D2C立ち上げを絶対に失敗させないための10の秘訣

D2C立ち上げのロードマップを見て、そのプロセスの多さに圧倒されたかもしれません。ここでは、特に失敗に繋がりやすいポイントを踏まえ、成功確率を上げるための10の秘訣を解説します。

①「誰の」「どんな課題を」解決するのかを突き詰める

最も多い失敗原因が、この「顧客解像度の低さ」です。「良い商品を作れば売れるはず」という作り手目線の発想は非常に危険です。常に「顧客はなぜ、他のブランドではなく私たちのブランドを選ぶのか?」を自問自答し、ペルソナが抱える深い悩みや課題(インサイト)を徹底的に掘り下げましょう。

②世界観(ブランドストーリー)に共感してもらう仕掛けを作る

モノが溢れる現代において、機能的な価値だけで差別化を図ることは困難です。創業者の想い、商品開発の裏側、ブランドが目指す社会など、ブランドの背景にある「ストーリー」を語りましょう。そのストーリーに共感した顧客は、価格ではなく価値でブランドを選んでくれる熱心なファンになります。

③小ロットで始め、顧客の声をもとに改善する

最初から完璧な商品を大量に生産し、大規模な広告を打つのはハイリスクです。まずは最小限の機能を持つ製品を小ロットで作り、市場に投入します。そして、初期顧客からのフィードバックを元に高速で製品やサービスを改善していく「リーンスタートアップ」の考え方が、D2Cでは非常に有効です。

④SNSをフル活用し、ファンコミュニティを形成する

D2CとSNSの親和性は非常に高いです。単なる宣伝媒体として使うのではなく、顧客と双方向のコミュニケーションを行う「コミュニティ」として活用しましょう。顧客の声に耳を傾け、時には商品開発に巻き込むことで、顧客は「消費者」から「ブランドを共に育てるパートナー」へと変わっていきます。

⑤初期からLTV(顧客生涯価値)を意識した設計を行う

新規顧客の獲得にばかり目が行きがちですが、D2Cビジネスの安定はLTVにかかっています。初回購入で終わらせず、2回目、3回目と継続してもらうための仕掛け(ステップメール、同梱物の工夫、会員プログラムなど)を事業の初期段階から設計しておくことが重要です。

⑥最適なECプラットフォームを選定する(Shopifyなど)

事業の成長フェーズに合わないプラットフォームを選んでしまうと、後から乗り換える際に多大なコストと手間がかかります。将来的な事業拡大(販売チャネルの追加、越境ECなど)を見据え、拡張性の高いShopifyのようなプラットフォームを最初から選んでおくことが、結果的に近道になるケースが多いです。

⑦物流・フルフィルメントで顧客体験を損なわない

「注文した商品がなかなか届かない」「届いた商品の梱包が雑だった」といった物流面での不満は、ブランドイメージを大きく損ないます。自社での対応が難しい場合は、信頼できる物流パートナー(3PL)と早期に連携することを検討しましょう。

⑧薬機法・景表法などの関連法規を遵守する

特に化粧品や健康食品などを扱う場合、薬機法(旧薬事法)や景品表示法などの法律を正しく理解する必要があります。「治る」「痩せる」といった効果効能を謳う表現は厳しく制限されています。知らずに違反してしまうと、重い罰則が科される可能性があるため、専門家によるチェックが不可欠です。

⑨資金計画を綿密に立てる

D2Cは立ち上げから黒字化まで、一定の時間がかかります。特に初期の集客コストや在庫コストは想定以上にかかることも少なくありません。運転資金がショートして事業継続が困難になる、という事態を避けるためにも、キャッシュフローを常に意識し、余裕を持った資金計画を立てましょう。

⑩各分野の専門家の知見を借りる

ここまで見てきたように、D2Cの立ち上げには、ブランディング、マーケティング、サイト構築、法律、財務など、非常に多岐にわたる専門知識が求められます。これらすべてを自社だけで完璧にこなすのは至難の業です。それぞれの分野で実績のある専門家やパートナーを見つけ、外部の知見を積極的に活用することが、成功への最短ルートと言えるでしょう。

【事例3選】成功するD2Cブランドの立ち上げ戦略

ここでは、D2Cモデルで成功を収めている国内ブランドを3つ取り上げ、その立ち上げ戦略と成功要因を詳細に分析します。

事例1:FABRIC TOKYO(アパレル) – OMO戦略で顧客体験を革新

FABRIC TOKYOは、「自分らしいビジネスウェア」をコンセプトに、カスタムオーダーのスーツやシャツをD2Cモデルで提供するブランドです。

立ち上げの経緯とコンセプト

創業者の森雄一郎氏は、自身がアパレル業界で感じた「サイズの合わない服を着るストレス」や、従来のオーダースーツ業界が持つ「価格の不透明さ」「敷居の高さ」といった課題を解決したいという想いから、2014年にサービスを開始しました。「誰もが自分らしいライフスタイルを自由にデザインできるオープンな社会をつくる」をビジョンに掲げ、テクノロジーを活用してオーダースーツを民主化することを目指しました。

成功のポイント:OMO戦略と顧客データの活用

FABRIC TOKYOの成功を語る上で欠かせないのが、OMO(Online Merges with Offline)戦略です。

  1. 初回は実店舗で採寸:顧客はまず実店舗に足を運び、プロのスタッフによる丁寧な採寸を受けます。このプロセスで、オンラインだけでは得られない安心感と信頼関係を構築します。
  2. 採寸データはクラウドに保存:採寸された身体のデータは、顧客のアカウントに紐づけてクラウド上に保存されます。
  3. 2回目以降はオンラインで完結:一度データを登録すれば、顧客はいつでもどこでも、PCやスマートフォンから自分のサイズに合ったスーツやシャツを自由にカスタマイズして注文できます。

この仕組みにより、「オーダーメイドの手間」と「ECで服を買う際のサイズ不安」という2つの大きな課題を同時に解決しました。オンラインの利便性とオフラインの体験価値を融合させた、まさにD2Cのお手本とも言える戦略です。また、蓄積された顧客データや購入データを活用し、新商品の開発やマーケティング施策の精度向上にも繋げています。

事例2:COHINA(アパレル) – 熱狂的ファンを生むコミュニティ戦略

COHINA(コヒナ)は、身長155cm以下の小柄な女性に特化したアパレルブランドです。創業者の原体験から生まれたニッチなコンセプトで、多くの女性の共感を呼び、急成長を遂げています。

立ち上げの経緯とコンセプト

創業者の田中絢子氏と清水葵氏は、共に身長150cm前後で、服選びに長年悩み続けていました。「Sサイズでも袖が長い」「デザインが気に入ってもサイズが合わない」という小柄女性特有のペイン(悩み)を解決するため、「あなたに陽が当たる服」をコンセプトに、2018年にブランドを立ち上げました。

成功のポイント:徹底した顧客目線とSNS活用

COHINAの成功要因は、ターゲットを深く理解し、顧客と密な関係を築くコミュニティ戦略にあります。

  • Instagramライブの徹底活用:COHINAは、ほぼ毎日Instagramのライブ配信を行っています。身長の異なるスタッフが実際に商品を着用し、サイズ感やコーディネートをリアルタイムで紹介します。視聴者からの質問にもその場で丁寧に答え、双方向のコミュニケーションを徹底。これにより、ECの弱点である「試着できない不安」を解消し、顧客との強い信頼関係を築いています。
  • 顧客を巻き込んだ商品開発:ライブ配信やSNSで顧客から集めた「こんな服が欲しい」という声を、実際の商品開発に活かしています。顧客は自分がブランド作りに参加しているという意識を持ち、より強い愛着を感じるようになります。

COHINAは、単に商品を売るのではなく、SNSを通じて「小柄女性の悩みに寄り添うコミュニティ」を形成することで、熱狂的なファンを育てることに成功したのです。

事例3:BULK HOMME(コスメ) – 世界観で魅了するブランディング戦略

BULK HOMME(バルクオム)は、「THE BASIC」をコンセプトに、高品質なメンズスキンケア製品を提供するD2Cブランドです。

立ち上げの経緯とコンセプト

2013年、代表の野口卓也氏が、当時まだ市場が未成熟だったメンズスキンケア領域で、本質的な価値を持つブランドを作りたいという想いから創業しました。ブランド名の「BULK」は、英語で「中身」を意味します。広告やマーケティング手法ではなく、「製品の品質(中身)で勝負する」という強い意志が込められています。

成功のポイント:徹底したブランディングとUGCの活用

BULK HOMMEは、その卓越したブランディング戦略で市場を切り拓いてきました。

  • 世界観の構築:製品の品質はもちろんのこと、シンプルで洗練されたパッケージデザイン、モノトーンを基調としたWebサイトや広告ビジュアルなど、一貫した世界観を徹底的に構築。これにより、「BULK HOMMEを持つこと自体がクール」というブランドイメージを確立し、男性の所有欲を刺激しました。
  • UGC(ユーザー生成コンテンツ)の戦略的活用:Instagramなどで、お洒落なユーザーがBULK HOMMEの製品を撮影し、自発的に投稿するケースが急増しました。同社はこれらのUGCを積極的に公式アカウントで紹介したり、広告に活用したりすることで、リアルな口コミを拡散させ、ブランドの信頼性と認知度を飛躍的に高めました。
  • グローバル展開:早くから海外展開を見据え、アジア、ヨーロッパへと進出。世界的なデザイン賞を受賞するなど、グローバルで通用するブランドとして評価を高めています。

機能だけでなく、感性に訴えかけるブランディングによって、BULK HOMMEはメンズスキンケア市場のD2Cのパイオニアとしての地位を不動のものにしました。

D2C立ち上げに関するよくある質問(Q&A)

最後に、D2Cの立ち上げを検討されている方からよく寄せられる質問にお答えします。

Q. 立ち上げにかかる費用はどのくらい?

A. 事業規模や扱う商材によって大きく異なりますが、スモールスタートであれば数十万円から可能です。

主な費用の内訳は以下の通りです。

  • ECサイト構築費:ShopifyなどのASPカートを利用すれば、月額数千円~数万円の利用料と、初期のデザインカスタマイズ費用(数万円~数十万円)で始められます。
  • 商品関連費:商品開発費、初回ロットの製造費、パッケージ制作費など。
  • マーケティング・広告費:月数万円からでも可能ですが、事業を軌道に乗せるには、ある程度の初期投資(月数十万円~)を見込んでおくと良いでしょう。
  • その他:法人設立費用、人件費、オフィス賃料など。

100万円~300万円程度の初期費用を見込んでおくと、比較的スムーズなスタートが切れるでしょう。綿密な事業計画を立て、必要な資金を事前に把握しておくことが重要です。

Q. 立ち上げまでの期間はどのくらい?

A. 構想からサイトオープンまで、最短でも3ヶ月~6ヶ月程度は見ておきましょう。

一般的なスケジュールの目安は以下の通りです。

  • 構想・事業計画(1~2ヶ月):コンセプト設計、市場調査、収支計画の策定。
  • 商品開発・製造(2~4ヶ月):OEM先の選定、試作品の製作、本生産。※商材によって大きく変動します。
  • ECサイト構築(1~2ヶ月):プラットフォーム選定、デザイン制作、商品登録、テスト。
  • マーケティング準備(1ヶ月):広告アカウントの開設、SNSアカウントの準備、ローンチ前のティザー告知など。

これらのプロセスは並行して進めることも可能ですが、特に商品開発は時間がかかるケースが多いため、余裕を持ったスケジュールを組むことが大切です。

Q. 専門知識がなくても立ち上げは可能?

A. 可能です。しかし、成功確率を高めるためには専門家のサポートが不可欠です。

Shopifyなどの便利なツールを使えば、プログラミングの知識がなくてもECサイトを作ることはできます。しかし、本記事で解説した通り、D2Cの成功には、集客マーケティング、ブランディング、CRM、データ分析など、非常に多岐にわたる専門性が求められます。

「サイトは作れたが、全く売れない」「広告費をかけたが、赤字が膨らむばかり」といった失敗に陥らないためにも、信頼できるパートナーに相談することをおすすめします。

まとめ|D2C立ち上げ成功の鍵は「信頼できるパートナー選び」

この記事では、D2Cブランド立ち上げの全貌を、7つのステップと10の秘訣、そして具体的な成功事例を通して解説してきました。

D2Cは、中間業者を介さず顧客と直接繋がることで、高い収益性と深い顧客関係を築ける、非常に魅力的なビジネスモデルです。しかし、その裏側では、ブランド戦略、商品開発、ECサイト構築、Webマーケティング、CRM、物流、法務、財務といった、あらゆる専門知識が求められる総力戦でもあります。

これらの領域すべてで高いパフォーマンスを発揮し、事業を成功に導くことは、決して簡単な道のりではありません。

StockSunが提供する「失敗しない」D2C立ち上げ支援とは

もしあなたが、D2Cの立ち上げに少しでも不安を感じていたり、最短ルートで成功を目指したいと考えていたりするなら、ぜひ一度StockSunにご相談ください。

StockSunには、累計5,000名との取引実績から厳選された、通過率1%以下の実力を持つWebコンサルタントが64名以上在籍しています。その中には、自らD2Cブランドを立ち上げ、成功させた経験を持つ経営者クラスの専門家も多数含まれています。

私たちは、机上の空論ではない、現場で培われた実践的なノウハウに基づき、貴社のD2C事業を構想段階から成功まで一気通貫で伴走します。

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