M&Aを検討している方で、以下のような疑問はありませんか?
「株式交換は具体的にどのような仕組み?」
「株式交換のメリットや手続きの流れが知りたい」
株式交換は、他の会社を100%子会社化する際に、多額の現金を準備せずに実行できるため、多くの企業に活用されている手法です。
本記事では、株式交換のメリット・デメリットや会社法に基づく手続きの流れ、企業事例などを分かりやすく解説します。
M&Aを検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
なお、StockSun株式会社では、トップ面談の準備から立ち会い、アドバイス、条件交渉サポートまで、豊富な経験に基づき、貴社のM&A成功を支援します。
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目次
株式交換とは、買い手企業が、売り手企業の発行済株式のすべてを、自社の株式などを対価として取得するM&Aの手法です。株式交換で、買い手企業は売り手企業を「完全子会社」にでき、100%の支配関係が成立します。
また、株式交換は株式移転と対をなす手法で、株式移転も100%の親会社・子会社関係を作る手法ですが、親会社は新設会社である点が異なります。
なお、M&Aのさまざまな手法の全体像を把握したい方は、以下の記事も参考にしてください。
M&Aとは? 主な目的や事業継承のデメリット・基本的な流れを徹底解説
ここでは、買い手企業・売り手企業それぞれが株式交換を行う4つのメリットを解説します。
株式交換は双方に多くのメリットがあるため、ぜひ参考にしてみてください。
株式交換には、買い手企業が多額の買収資金を用意する必要がないメリットがあります。売り手企業の株式を取得する際の対価として、自社の株式を新たに発行して交付すればよいため、手元の現金を減らさずにM&Aを実行できます。
対価の一部または全部を現金とするのも可能ですが、基本的には「株式」を対価にできるのがポイントです。
また、大規模な資金調達が不要なため、特に資金力に限りがある企業でも、スピーディーに企業買収を進められるでしょう。
株式交換では、売り手企業は買い手企業の完全子会社となりますが、会社そのものが消滅するわけではなく、独立した法人として存続します。
法人格が維持されるため、売り手企業のブランドイメージや従業員の雇用などをそのまま継続でき、組織再編にともなう社内外の混乱を最小限に抑えられます。
また、株式交換成立前後で異なる点は株主の構成のみであることから、従業員のモチベーションの低下が起こりにくいのもメリットです。
株式交換の手続きを進める上で、売り手企業の株主全員から個別に同意を得る必要はありません。会社法では、株主総会で議決権の3分の2以上の賛成を得る「特別決議」で承認されれば、株式交換を実行できます。
このため、一部の株主が反対していても、大多数の賛成があれば手続きを進められるため、スピーディーな進行が可能です。また、特に株主の数が多い企業の場合でも手続きが煩雑にならないのも大きなメリットです。
株式交換により、売り手企業の株主は、保有していた株式と引き換えに、買い手企業である親会社の株式を受け取れるため、買収企業の株主として引き続き関与できます。
親会社の株主となると、今後のグループ全体の成長による株価上昇(キャピタルゲイン)や、配当金(インカムゲイン)などの利益を享受する機会が得られます。
また、会社の売却後も、引き続き事業の成長を見守り、将来配当などを受けたいと考える株主にとって、株式交換は魅力的な選択肢です。
ここでは、買い手企業・売り手企業が株式交換を行う3つのデメリットを解説します。
上記のリスクを事前に理解し、対策しておくと株式交換での失敗回避につながります。
株式交換は、会社法に定められた厳格な手続きを踏む必要があり、契約の締結から情報の開示、株主総会の開催、債権者保護手続きなど多くのステップを経なければなりません。
そのため、弁護士や会計士などの専門家の協力が不可欠であり、社内での調整にも多大な労力がかかってしまいます。
また、計画からM&Aの最終的な完了(クロージング)まで、数ヵ月以上を要するケースも珍しくありません。
なお、M&Aのクロージングに関して詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
M&Aのクロージングとは? 重要性や条件から手続きの流れを3STEPで解説
買い手企業が、対価として自社の新株を発行する場合、発行済み株式数は増加するため、既存の株主の持ち株比率は相対的に低下し、株主構成が大きく変化します。
持ち株比率の低下は、既存株主の議決権への影響力を弱めることにつながり、経営の意思決定に影響を及ぼす可能性があります。特に、創業者や経営陣の持ち株比率が下がると、経営の安定性が損なわれるリスクも考えられるでしょう。
このため、資金面などの理由から株式対価での株式交換を行う場合には、株主構成が変わることへの対策が必要です。
株式交換のために新株を発行すると、一株あたりの利益が減少する「株式の希薄化」が起こります。
市場の投資家が、株式の希薄化や、M&A後の統合がうまく進まないリスクを懸念した場合、買い手企業の株式を売りに出す可能性があり、株価が下落してしまう恐れがあります。
また、株価の下落は、既存株主だけでなく、対価として株式を受け取った元売り手企業の株主にも不利益が被るかもしれません。
株価の維持・向上のためには、M&Aによる成長戦略を市場に明確に示し、投資家の信頼を得るのが不可欠です。
ここでは、株式交換の手続きの流れを6つのステップに分けて解説します。
スムーズな手続きにつなげるために、ぜひ参考にしてみてください。
まず、買い手企業(完全親会社)と売り手企業(完全子会社)の間で、経営統合に向けた交渉を行います。
株式交換だけでなく、株式譲渡や合併など、他のM&A手法の可能性も探りながら、最適な形を模索するのが一般的です。
株式交換で進める場合は、株式の交換比率の計算や売り手企業への株式の交付数などを協議し、同意が得られた場合、経営統合に関する基本合意書を締結します。
なお、LOIに関して詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。
LOIとは? 締結目的やMOUとの違いから11の記載内容を解説
株式交換では、会社法第767条の規定により、株式交換比率や効力発生日などを定めた契約を締結しなければなりません。主な記載事項には、株式の交換比率、対価として交付する株式数や金銭の額、株式交換の効力が発生する日などが含まれます。
契約締結の決定は取締役会設置会社であれば取締役会決議によって行われます。また、売り手企業の新株予約権を買い手企業の新株予約権と交換する際は、その旨も株式交換契約書に記載してください。
株式交換契約を締結したら、株主や債権者などの利害関係者に対して、契約内容や両社の企業情報などを開示するための資料を作成し、各社の本店に備え置きます。
事前開示書類の備置きは、株主総会の開催日の2週間前の日から、株式交換の効力が生じた後6ヵ月を経過する日まで継続しなければなりません。
そのため、株主は総会で議決権を行使する前に、十分な情報をもとに判断できます。
株式交換を実行するためには、買い手企業と売り手企業の双方で株主総会を開催し、承認を得る必要があります。
株主総会を開催するには、株主に対して「招集通知」を発送しますが、上場企業の場合は総会の2週間前、非上場企業の場合は1週間前までに発送するのが一般的です。
株主総会では、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要な「特別決議」での承認が求められます。
株主総会で承認され、契約書で定めた「効力発生日」を迎えると、株式交換の法的な効力が生じます。効力発生日をもって、売り手企業の株式はすべて買い手企業に移転し、売り手企業の株主は対価として買い手企業の株式などを得ます。
基本的に、株式交換では資本金の額などに変動がないため、登記の変更は不要です。ただし、新株予約権の交換などが行われ、買い手企業の発行済株式総数などに変更が生じた場合には、効力発生日から2週間以内に法務局で変更登記の手続きを行う必要があります。
株式交換の完了後、買い手企業と売り手企業は、遅滞なく「事後開示書類」を作成し、それぞれの本店に効力発生日から6ヵ月間、備え置く必要があります。
事後開示書類には、実際の手続きの経過や、移転した株式の数、反対株主からの株式買取請求の状況など、株式交換の結果に関する情報を記載してください。
事後開示書類から、株主や債権者は組織再編の結果を正確に把握でき、手続きの透明性が確保されます。
ここでは、株式交換で事業の強化やシナジー創出に成功した企業の事例を2つ紹介します。
株式交換が実際にどのように活用されているのか、具体的な事例を見ると理解が深まります。
2017年、音楽コンテンツ配信などを手がける株式会社フェイスは、老舗レコード会社の日本コロムビア株式会社を株式交換により完全子会社化しました。
アーティスト育成やコンテンツ制作など、さまざまな面で総合的な施策を加速させていく必要があると判断し、株式交換を実施しました。
株式交換によって100%の親子関係を構築して意思決定を迅速化させ、両社の強みを活かした総合的なコンテンツ事業の展開と、大きなシナジー効果を狙っています。
参考:株式会社フェイスによる日本コロムビア株式会社の株式交換による完全子会社化に関する株式交換契約締結のお知らせ
2012年、日産自動車は名古屋証券取引所1部に上場している愛知機械工業を株式交換で完全子会社化しました。
愛知機械工業の高度な技術力による新規開発や連携、グループ一体化によるコストダウンが株式交換の目的です。
なお、日産自動車の純資産額の5分の1以下の規模で行われたため、株主総会の承認を省略できる「簡易株式交換」が用いられました。
参考:日産自動車株式会社による愛知機械工業株式会社の株式交換による完全子会社化について
株式交換では、会社法に則った契約締結・開示・株主総会など、多数の手続きが必要で、専門家の関与が必須なため、社内調整の負担も大きくなりがちです。
そこで、M&Aコンサルティング会社の支援を受けると、株式交換の手続きで失敗を避けつつ、スムーズにM&Aを進められます。また、法的リスクの管理やM&Aのお相手探し、交渉などのサポートも期待できるでしょう。
なお、おすすめのM&Aコンサルティング会社に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
【2025年最新版】おすすめM&Aコンサルティング会社・サービス10選!選び方も解説
株式交換は、売り手企業の全株式を取得し、完全な親子会社関係を築くための強力なM&A手法です。
自社の株式を対価にできるため、多額の現金がなくても買収が可能である点や、売り手企業が存続できる点など多くのメリットがあります。
一方で、買い手企業の株主構成の変化や、手続きの煩雑さなどのデメリットも存在します。
もし株式交換を検討しており、複雑な手続きや戦略立案にお悩みであれば、M&Aの専門家集団である「StockSun株式会社」にぜひご相談ください。
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