企業買収を考える中で、以下の疑問をお持ちではないでしょうか?
「企業買収で自社の成長を加速させたい」
「最適なM&A手法や進め方を知りたい」
企業買収を進めて事業を成長させるには、正しい手法の選択やプロセスへの理解が欠かせません。本記事では、M&Aの企業買収の基本的な定義や、企業買収の7つの手法を解説します。
この記事では、企業買収を目的に行われたM&A事例も3つ紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
もし、M&Aに関する不安を感じているなら、専門家への相談が有効です。
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目次
企業買収とは、他社の株式や事業を取得して経営権を得る行為です。
企業の成長戦略を実現するM&Aの一形態であり、新規事業への参入や事業規模の拡大を短期間で実現する目的で行われます。
会社の経営権全体を買い取る場合を「企業買収」、会社の一部の事業のみを買い取る場合を「事業買収」と呼び分けるのが一般的です。
企業同士が一つに統合される「合併」とは異なり、買収された企業は法人として存続する点が特徴です。
なお、M&A全体の流れや目的をより深く知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
M&Aとは? 主な目的や事業継承のデメリット・基本的な流れを徹底解説
企業買収は対象企業の経営陣との合意の有無によって、大きく2種類に分けられます。
一つは「友好的買収」で、売り手企業の経営陣と合意の上で進められる買収です。両社の協力体制のもとで進むため、買収後の統合作業が円滑に進みやすい点がメリットです。
もう一つは「敵対的買収」で、経営陣の同意なしに買い手がTOB(株式公開買付け)で市場の株主から直接株式を買い集め、強行する買収を指します。
売り手側は「ポイズンピル」「黄金株」などの防衛策で対抗するため、成功率は低く、関係者に悪い印象を与えるリスクもあります。
企業買収、合併、完全子会社化は、いずれもM&Aに関連しますが、それぞれ意味が異なります。
企業買収 | 合併 | 完全子会社化 | |
目的 | 経営権の取得 | 会社の統合 | 100%の支配権確立 |
法人格 | 維持される | 一方または双方が消滅 | 維持される |
株式取得 | 過半数が一般的 | 不要 | 100% |
企業買収は、経営権(株式の過半数)を得ることが目的で、買収された会社の法人格は残ります。
一方、合併は2つ以上の会社が1つの会社になる組織再編であり、消滅する法人格があるのが特徴です。
完全子会社化は、ある企業が対象企業の株式を100%取得する状態を指します。企業買収の一形態ですが、より強力な支配関係を意味します。
企業買収の主な7つの手法は、以下のとおりです。
企業の目的や状況に応じて最適なものを選択する必要があります。
株式譲渡は、売り手企業の株主が持つ株式を、買い手企業に譲渡する手法です。売り手株主は対価として現金を受け取ります。
手続きが比較的シンプルで迅速に経営権を移転できるため、中小企業のM&Aでも多く用いられています。
株式譲渡の場合、会社の法人格や従業員・取引先との契約関係はそのまま維持されるため、事業への影響を最小限に抑えられるのが特徴です。
ただし、会社の資産や負債も包括的に引き継がれるため、買い手は事前の調査でリスクを正確に把握しておかなければなりません。
第三者割当増資は、売り手企業が新たに発行した株式を、特定の第三者である買い手企業が引き受ける手法です。
買い手は出資によって株主となり、経営への影響力を持ちます。第三者割当増資は、売り手企業にとっては事業拡大のための資金調達手段となります。
買い手企業にとっては、比較的少ないコストで売り手企業との資本関係を築き、将来の完全買収への足がかりとするのも可能です。
ただし、新株発行によって既存株主の持ち株比率が低下するため、既存株主への説明と配慮が必要不可欠です。
株式交換は、買い手企業が売り手企業の全株式を取得し、対価として自社の株式を交付する手法です。結果的に、売り手企業は買い手企業の完全子会社となります。
株式交換のメリットは、買い手企業が現金を用意する必要がない点です。自社の株式を対価に使うため、手元資金が少なくても大規模な買収を実現できます。
売り手企業の株主は、買い手企業の株主となることで、統合後のグループ全体の成長による利益を享受できます。
株式交換は上場企業同士のM&Aや、グループ内の組織再編などでよく活用される手法です。
株式移転は、売り手企業が全株式を、新たに設立する会社(親会社)に移転させる手法です。対価として、売り手企業の株主は新設された親会社の株式を受け取ります。
複数の企業が共同で株式移転を行えば、一つの持株会社の傘下に入る経営統合を実現可能です。
各企業は子会社として独立性を保ちながら、グループ全体の一体的な経営戦略を進められます。
株式移転は、既存の会社が親会社になる株式交換とは異なり、新設会社が親会社になる点が特徴で、グループ経営の強化や組織再編で用いられるのが一般的です。
事業譲渡は、売り手企業が営む事業の全部または一部を、買い手企業に譲渡する手法です。株式ではなく、事業そのものが売買の対象となります。
事業譲渡の特徴は、譲渡する以下の項目を個別に選択して承継できる点です。
買い手は必要な事業だけを選んで買収でき、不要な資産や簿外債務などのリスクを切り離せます。
売り手にとっては、不採算部門を切り離して中核事業に集中する「選択と集中」の手段として有効です。
ただし、事業譲渡では個別の同意や契約が必要なため、手続きが煩雑になる傾向があります。
TOB(株式公開買付け)は、買収者が「買付期間・価格・株数」を公告し、証券取引所を介さずに不特定多数の株主から株式を買い集める手法です。
市場内で大量の株式を一度に購入すると株価が急騰しますが、TOBであらかじめ定めた価格であれば、安定的に株式を取得できます。
TOBは短期間で経営権の獲得に必要な株式数を確保できるため、迅速な買収が可能です。
経営陣の同意を得て行う友好的TOBだけでなく、同意なしに行う敵対的TOBでも使われる代表的な手法であり、主に上場企業の買収で用いられます。
会社分割は、企業が営む事業の一部または全部を、既存の別会社または新しく設立する会社に承継させる組織再編の手法です。
事業を承継する対価として、承継会社の株式が交付されます。事業譲渡が個別の資産や契約を一つずつ移転するのに対し、会社分割では事業に関する権利義務が包括的に承継される点が特徴です。
会社分割は、グループ企業内での組織再編や、特定事業を切り出して独立させる目的で活用されます。なお、法務や会計面での対応が複雑なため、専門家の支援が必要不可欠です。
M&Aの企業買収を行うメリットは、下表のとおりです。
買い手のメリット | 売り手のメリット |
新規事業への迅速な参入、事業の多角化市場シェアの拡大、スケールメリットの獲得技術、ノウハウ、優秀な人材の獲得既存事業とのシナジー効果による収益力向上 | 後継者問題の解決創業者利益の確保(キャピタルゲイン)大手企業の傘下に入ることによる経営基盤の安定不採算事業を切り離し、中核事業への集中 |
企業買収は双方のニーズが合致したとき、互いの企業価値を高める強力な戦略となります。
企業買収にはメリットだけでなく、デメリットやリスクも存在します。
買い手のデメリット | 売り手のデメリット |
買収後の統合作業(PMI)が難航し、期待したシナジーが得られない簿外債務など、事前の調査で把握できなかったリスクの表面化異なる企業文化の衝突による従業員の離反や人材流出買収資金の負担による財務状況の悪化 | 希望する条件(価格など)で売却できるとは限らない従業員の雇用条件が悪化する可能性長年築いてきた企業文化やブランドが失われる恐れ |
上記のリスクを十分に理解し、対策を講じることが重要です。
企業買収を目的に行われたM&A事例を3つ紹介します。
それぞれの事例から、企業買収の戦略的な意図や効果を学びましょう。
2004年、ソフトバンクは固定電話大手の日本テレコムを買収しました。
当時、ブロードバンド事業を急速に拡大していたソフトバンクは、法人向け通信サービスを強化し、事業の柱を多様化することを買収の目的としていました。
買収の決め手は、日本テレコムが持つ約17万社の法人顧客基盤と、全国に広がる光ファイバー網です。
買収により、ソフトバンクは個人・法人両方にサービスを提供する総合通信事業者へと飛躍しています。本事例は既存事業の弱点を補い、一気に事業規模を拡大した代表例です。
参照:日本テレコムの買収について|ソフトバンクグループ株式会社
2019年、ヤフーはファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOを、TOBにより子会社化しました。両社の強みを活かし、EC市場での競争力を強化するのが買収目的でした。
ヤフーはZOZOTOWNを自社の「PayPayモール」に出店させ集客力を高め、ZOZOはヤフーが得意とする中高年層に顧客層を広げることに成功しています。
互いの顧客基盤やサービスを補完し合い、大きなシナジーを生み出した事例です。
参照:株式会社ZOZO、ヤフー株式会社による当社株式に対する公開買付けに賛同意見を表明し、資本業務提携を決定|株式会社ZOZO
2006年、楽天は宿泊予約サイト「旅の窓口」を運営するマイトリップ・ネットを買収し、完全子会社化しました。
EC事業に次ぐ新たな収益の柱として、旅行事業を強化するのが買収目的でした。
買収により、楽天は現在の「楽天トラベル」の基盤を確立し、巨大な会員基盤と宿泊施設ネットワークを獲得しています。グループ全体の成長に大きく貢献した戦略的な買収事例です。
M&Aの企業買収で失敗しないための4つのポイントは、以下のとおりです。
上記のポイントを一つずつ確実に実行することが、失敗のリスクを減らす鍵となるでしょう。
M&Aの企業買収では、まず買収目的を明確にするのが重要です。新規事業参入、シナジー効果の獲得など、具体的な目的がなければ、買収そのものが目的化してしまいます。
M&A戦略を立てる最初の段階で、「買収によって何を実現したいのか」を言語化し、社内で共有するのがポイントです。第三者の専門家を交え、客観的な視点で目的を精査するのも有効です。
デューデリジェンスとは、買収対象企業の価値やリスクを精査する手続きです。
財務や法務など多角的な観点から、帳簿には現れない簿外債務や訴訟リスクなどを徹底的に調査します。
デューデリジェンスで発見されたリスクは、買収価格の交渉材料にしたり、契約書にリスク回避の条項を盛り込んだりするために活用されます。
PMIは買収後の経営統合作業を指します。統合すべき項目の例は、以下のとおりです。
PMIの計画が不十分だと、現場が混乱し、顧客離れや優秀な人材の流出を招くリスクがあります。
特に、企業文化の違いは従業員の間に摩擦を生みやすいため、丁寧なコミュニケーションを通じて、段階的に融合を進める姿勢が求められます。
企業買収は法務や税務など、高度な専門知識を要する複雑なプロセスです。自社だけですべてを対応するのは困難であり、思わぬリスクを見落とす可能性があります。
一方、M&Aの仲介会社やアドバイザーなどの専門家に依頼すれば、戦略の立案からPMIまでを一貫してサポートしてもらえます。
専門家の知見を借りると法的な不備を防ぎつつ、適切な買収価格を算定し、実行力のあるM&Aを実現できるでしょう。
なお、おすすめのM&Aコンサルティング会社を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
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企業買収は、正しく活用すれば企業の未来を切り開く強力な手段となりますが、プロセスは複雑であり多くの落とし穴が存在します。
もし、M&Aに関する不安を感じているなら、専門家への相談が有効です。
StockSun株式会社には、M&Aプロセスに精通した専門家が多数在籍しています。
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