「M&Aを進めているが、クロージングとは具体的に何をするのだろうか?」
「クロージングの条件や手続きの流れ、期間を詳しく知りたい」
「M&Aの最終段階で失敗しないために、注意すべき点は?」
M&A(合併・買収)のプロセスで、最終段階に位置するのが「クロージング」です。クロージングはM&Aの成否を左右する重要な手続きですが、詳細を正確に理解している方は少ないでしょう。
本記事では、M&Aでのクロージングの意味や重要性、完了までの期間、そして取引成立に不可欠なクロージング条件などを詳しく解説します。さらに、プレクロージング・ポストクロージングなどの関連手続きや、M&Aの手法による違い、全体の流れなども分かりやすく説明します。
本記事を読めば、M&Aの最終関門であるクロージングに関する疑問が解消され、自信を持ってM&Aプロセスを進められるようになるでしょう。
目次
M&Aでのクロージングを理解するためには以下の3つを押さえる必要があります。
まずは基本を押さえ、クロージングの位置づけを理解しましょう。
クロージングとは、M&A取引の「実行」を意味します。最終契約書(株式譲渡契約書など)に調印した後、その契約内容を実際に履行する手続き全体がクロージングです。
具体的に何をするかはM&Aの手法で異なります。例えば株式譲渡では、売り手から買い手への株式の引き渡しと、買い手から売り手への代金の支払いが主な内容です。事業譲渡なら資産や契約の移転などが該当します。
つまり、最終契約で決めたことを実行する最終ステップがクロージングです。
M&A取引でのクロージングは、法的に取引が有効に完了したことを示す重要な手続きです。
M&Aは多くの専門家が関与する複雑なプロセスであり、書類や工程が多く、手続き漏れのリスクをともないます。クロージングは、これらすべての手続きが完了し、契約内容が完全に実行されたことを最終確認するプロセスです。
適切にクロージングが行われた事実は、M&Aが法的に有効であることの証明となります。不備があれば後々トラブルになる可能性もあるため、慎重かつ正確に行う必要があります。
M&Aのクロージングは、最終契約の締結から完了まで、通常1ヵ月から1年程度の期間が必要です。契約後すぐに完了するわけではなく、一定の準備期間が設けられます。
この期間には、クロージングの前提条件を満たすための手続き、例えば関係省庁への届出、従業員や取引先への説明と同意、デューデリジェンス(買収監査)で発見された問題点の修正などが行われます。
これらの手続きがすべて完了し、条件が満たされたことを確認した上で、実際のクロージングが実行されます。
M&Aを最終的に成立させるには、「クロージング条件」と呼ばれる、最終契約書で定められた前提条件を満たす必要があります。クロージングを実行するために当事者双方が達成すべき条件です。
例えば、「主要取引先からM&A後も取引を継続する同意を得る」が挙げられます。条件を満たせない場合は、達成努力や条件変更の交渉が行われますが、最終的に満たせないと判断されれば、M&A取引自体が破談になることもあります。
したがって、クロージング条件の設定と達成はM&Aの成否に直結します。
M&Aの最終契約書にはさまざまなクロージング条件がありますが、ここでは特に重要とされる代表的な条項を2つ紹介します。
これらは取引のリスク管理の観点から重要視されます。M&Aを検討している方は押さえておきましょう。
MAC条項(Material Adverse Change条項)は、最終契約締結からクロージングまでの間に、対象企業の財務や経営に「重大な悪影響」が発生していないことを確認する条件です。
「重大な悪影響」の定義は契約ごとに協議されますが、対象会社の不祥事発覚や主要取引先の倒産などが該当します。この条項に抵触する事態が発生した場合、通常、買い手はM&A取引を中止できます。
MAC条項は、予期せぬリスクから買い手を守るための条項です。
キーマン条項とは、M&A対象会社の経営上重要な役員や従業員が、クロージング後も会社に在籍し続けることを確認する条件です。
キーパーソンの持つ知識や経験、人脈が企業価値の重要な要素である場合、キーマンの退職はM&A後の事業運営に大きな影響を与えかねません。
キーマン条項はキーパーソンの流出リスクを防ぎ、M&A後の事業の継続性を確保する目的で設けられます。
クロージング手続きを円滑に進めるには、その前後の準備と対応が重要です。ここでは関連する2つのフェーズを解説します。
これらを理解し、クロージング全体の流れを把握しましょう。
プレクロージングは、実際のクロージング実行直前に行う最終準備段階です。通常、クロージングの数日前から当日朝に行われ、クロージングに必要な手続きや書類がすべて整っているかを確認します。
具体的には、株式譲渡に必要な取締役会などの承認確認、関連議事録や書類の準備チェックです。また、関係者が集まり、チェックリストにもとづき、最終契約書で定められたクロージング条件がすべて満たされているかを最終確認します。
M&A取引の安定性を確保し、当日の手続きを円滑に進めるためには、丁寧なプレクロージングが重要です。
ポストクロージングは、クロージング完了後に行う手続きや活動全般を指します。
M&A取引は法的に完了しますが、役員変更の登記、契約上の誓約事項(競業避止義務など)の履行、取引価格の調整(アーンアウトなど)などの対応が必要になる場合があります。
さらに重要なのがM&A後の統合作業(PMI)です。経営方針の統合、組織再編、業務プロセスの統一など、双方の事業を円滑に統合するための活動もポストクロージングに含まれます。
クロージングの具体的な内容はM&Aの手法によって異なります。ここでは、代表的な2つの手法の違いを解説します。
自社が検討する手法に合わせた手続きを理解することが重要です。
株式譲渡はM&Aでもっとも一般的な手法です。売り手株主が持つ株式を買い手に譲渡し、経営権を移します。
クロージング手続きの中心は「株式の譲渡」と「株式代金の支払い」です。株券発行会社なら株券の交付、同時に株主名簿の書き換えを行います。株券不発行会社では、株券交付は不要です。
上場企業は電子的に管理されるため物理的なやり取りはありません。クロージングでは、売り手から買い手へ株式が渡り、買い手から売り手へ代金が支払われることで取引が実行されます。
事業譲渡は、会社事業の全部または一部を譲渡する手法です。株式譲渡よりクロージング手続きが煩雑になる傾向があります。
クロージングでは、譲渡対象となる以下のような項目を移転させる手続きが中心となります。
原則として株主総会の特別決議(出席株主の3分の2以上の賛成)が必要です。不動産の登記や従業員の転籍、取引先との契約再締結などの手続きが完了すれば、クロージングとなります。
ここでは、M&Aのクロージングに至るまでのプロセス全体を、大きく3つのステップに分けて解説します。
クロージングが、M&Aプロセスの中でどのような位置づけにあるかを把握しましょう。
M&Aの最初のステップは検討と準備です。買い手はM&Aの目的や対象企業像を明確にし、戦略を立てます。売り手は譲渡範囲、希望価格、時期などを具体化します。
M&Aは専門知識が必要で秘密保持も重要になるため、M&A仲介会社やアドバイザーにサポートを依頼するのが一般的です。仲介会社は実績、専門性、料金などを比較し、信頼できるパートナーを選びましょう。
次に、M&A仲介会社やアドバイザーのサポートのもと、買い手は候補企業を、売り手は譲渡先候補を探します。候補が見つかれば秘密保持契約を結び、詳細情報を開示して交渉を開始します。
価格、スケジュールなどの基本的な条件で大筋合意できれば、「基本合意書(LOIやMOUとも呼ぶ)」を締結します。これは詳細調査(DD)や最終契約交渉の基礎となりますが、通常、独占交渉権などを除き法的拘束力はありません。
最後のステップが最終契約とクロージングです。基本合意後、買い手は対象企業に対しデューデリジェンス(DD)を実施し、財務・法務・ビジネスなどのリスクを調査します。
DDで大きな問題がなければ最終条件交渉を行い、合意すれば法的拘束力のある「最終契約書」を締結します。ここにはクロージング条件も明記されます。
その後、すべてのクロージング条件を満たしたことを確認し、株式譲渡や代金支払いなどのクロージングを実行して、M&A取引は完了です。
M&A、特に最終段階のクロージングは、法務・税務・会計などの高度な専門知識を要する複雑なプロセスです。当事者企業だけですべてを進めるのは困難で、リスクがともないます。
そのため、M&Aをスムーズかつ安全に進めるには、M&A仲介業者やアドバイザーの活用がおすすめです。仲介業者は交渉戦略、企業価値評価、DD支援、契約書作成、クロージング実行まで、プロセス全体を専門知識にもとづきサポートします。
判断が難しい複雑な問題にも適切なアドバイスを施してくれるため、リスクを最小限に抑える手助けとなります。
クロージングはM&Aを法的に完了させる最終関門であり、その手続きは複雑で専門知識が不可欠です。成功のためには、クロージングの正確な理解と信頼できる専門家のサポートが重要です。
もし、M&Aのクロージングに関して具体的な疑問やお悩みがあれば、ぜひ「StockSun株式会社」にご相談ください。M&Aに関する豊富な知識と経験を持つプロフェッショナルが、貴社の状況に合わせた最適なアドバイスとサポートを提供します。
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