「M&Aを進める上でIM(アイエム)という書類が必要だと聞いたけど、どのようなもの?」
「IMには何を書けばいいの?作成する上で注意すべき点はある?」
M&A(合併・買収)を検討されている企業の経営者や担当者の方で、このような疑問をお持ちではないでしょうか。IM、すなわちインフォメーション・メモランダム(企業概要書)は、M&Aのプロセスで重要な役割を担う書類です。
本記事では、M&AでのIMの基本的な概要や作成する目的を解説します。さらに、IMに具体的に記載すべき8つの内容と、作成・提示する際に必ず押さえておくべき4つのポイントを詳しく説明します。
IMを活用し、M&A交渉を円滑に進めたい方は、ぜひご参考ください。
また、もしM&Aに関する不安を感じているなら、専門家への相談が有効です。
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目次
M&AでのIMとは、一般的に「企業概要書」と呼ばれる資料のことで、売り手企業の詳細な情報が網羅的に記載された文書を指します。「IM」は「Information Memorandum(インフォメーション・メモランダム)」の頭文字を取った略称です。
IMは通常、売り手企業から依頼を受けたM&A仲介会社やアドバイザリーなどの専門家によって作成されます。売り手企業は、IMを通じて自社の事業内容、強み、財務状況などの魅力を買い手候補企業にアピールし、よりよい条件での売却を目指します。
一方、買い手候補企業にとっては、IMはM&Aを本格的に検討するかどうかを判断するための重要な検討材料です。内容次第で、その後の交渉に進むかどうかが決まるため、IMは売り手・買い手双方にとって重要な書類です。
なお、以下の記事では、M&Aの全体像や基本的な流れを解説しています。まずはM&Aに関する理解を深めたいと考えている方は、以下の記事を参考にしてください。
売り手企業が時間とコストをかけてIMを作成するのには、主に2つの重要な目的があります。
これらの目的を達成することが、M&Aを成功に導く上で不可欠です。以下で、それぞれの目的を詳しく解説します。
IMを作成する最大の目的は、買い手候補企業に対して、自社の事業内容や強み、将来性などの魅力を伝え、買収意欲を高めるためです。IMは、いわばM&Aでの「会社の履歴書兼営業資料」ともいえます。
M&Aの交渉初期段階では、買い手候補は売り手企業の限られた情報しか持っていません。IMを通じて、自社の詳細な情報を分かりやすく、かつ魅力的に提示できなければ、買い手候補の関心を引きつけられず、交渉に進むことすらできません。
そのため、M&A仲介会社などの専門家は、売り手企業の潜在的な価値や魅力を最大限に引き出すようにIMを作成します。買い手候補に「この会社を買収したい」と思わせるような魅力的なIMを作成することが、M&Aの第一歩となります。
IM作成のプロセスは、売り手企業自身が自社の強みと弱みを客観的に再認識し、企業価値を見つめ直すよい機会にもなります。
M&Aの専門家は、IMを作成するにあたり、企業の事業や財務、組織などあらゆる側面を詳細に調査・分析します。この過程で、経営者がこれまで気付かなかった自社の潜在的な強みや、逆に改善すべき弱みを把握することが可能です。
IM作成を通じて自社の現状を正確に把握することで、M&Aの交渉に臨む前に、強みをさらに伸ばす戦略や、弱点を克服するための具体的な施策を検討できます。
企業価値そのものを向上させ、より有利な条件でM&Aを進められる可能性が高まります。
IMには、買い手候補がM&Aを検討するために必要な情報を網羅的に記載する必要があります。ここでは、一般的にIMに盛り込まれる主要な8つの項目を解説します。
質の高いIM作成のためには、これらの項目を具体的かつ正確に記載することが重要です。
企業概要は、IMの冒頭に記載される会社の基本的な情報をまとめた部分で、「エグゼクティブサマリー」とも呼ばれます。買い手候補が最初に目にする部分であり、ここで関心を持ってもらえるかが重要です。
企業概要には、主に以下の内容を簡潔に記載します。
市場環境では、自社の参入している業界を取り巻く環境に関する記載を行うのがおすすめです。文章だけでなく、会社の外観写真や株主構成のグラフなどを加えることで、視覚的に分かりやすく、より魅力的な概要となります。
事業内容の項目では、会社がどのような事業を行っているのかを具体的に説明します。買い手候補がビジネスモデルや収益構造を理解するために不可欠な情報です。
事業内容には、主に以下の内容を記載します。
自社の商品やサービスの写真を掲載したり、取引の流れをフローチャートで図式化したりすると、より分かりやすくなります。また、市場での自社の立ち位置や競合と比較した場合の優位性、独自の技術やノウハウなども記載することで、事業の価値を鮮明に伝えられます。
組織の項目では、会社の人的な側面に関する情報を記載します。経営陣や従業員の構成、組織体制などを明らかにすることで、買い手候補は買収後の組織運営をイメージしやすくなります。
組織の項目で主に記載する内容は、以下の通りです。
業種によっては、特定の資格を持つ従業員の数や、許認可の取得状況、従業員の平均給与なども重要な情報となります。定量的なデータに加え、創業者のM&Aにかける想いや、キーパーソンとなる従業員の能力、これまでの実績などの定性的な情報も盛り込むことで、組織の魅力をより深く伝えられます。
財務状況は、会社の経営状態や収益性を客観的に示す上で重要な項目の一つです。買い手候補は、この情報をもとに企業価値を算定し、買収価格を検討します。
財務状況には、主に以下の内容を記載します。
過去数年分の財務諸表を掲載することで、業績の推移や財務の安定性を示せます。単に数字を羅列するだけでなく、売上や利益の推移をグラフ化すると、視覚的に分かりやすくなります。
また、財務状況が大きく変動した期があれば理由を補足したり、借入金の内訳や担保の状況などを詳細に記載したりすることも重要です。
なぜ会社を売却しようと考えたのか、その理由を正直かつ具体的に記載します。買い手候補は、売り手の売却理由を重視します。理由によっては、買収後のリスクを懸念する可能性があるためです。
売却理由には、主に以下の内容を記載します。
例えば、「業績は好調だが後継者がおらず、事業承継のためにM&Aを決断した」などの具体的な理由を記載します。売却理由が明確なほど、買い手候補は売り手の状況を理解しやすく、その後の交渉もスムーズに進みやすくなります。
また、希望するM&Aのスキーム(株式譲渡、事業譲渡など)にも影響するため、売却理由は具体的に記載しましょう。
事業運営に必要な許認可や、関連する法規制を記載します。特定の事業を行うためには行政からの許認可が必要な場合があり、以下の情報が重要です。
買い手企業は、M&Aによって売り手企業の事業を引き継ぐ場合、原則として関連する許認可を取得し、法規制を遵守する義務も負う必要があります。そのため、許認可の状況や法規制に関する情報は、買い手が買収リスクを判断する上で不可欠です。
記載漏れや誤りがあると、M&A後に事業継続が困難になったり、買い手が行政処分を受けたりする可能性があるため、細心の注意が必要です。
ただし、専門性が高い項目であるため、弁護士や行政書士などの専門家に確認を依頼することをおすすめします。
以下の資産は企業価値評価の対象となるため、正確な情報が必要です。
土地や建物の場合は、内部のレイアウト図や外観・内部の写真、賃貸か自己所有かの情報なども加えると、買い手候補はより具体的にイメージできます。車両やリース資産、事業に使っていない非事業用資産など関しても漏れなく記載しましょう。
今後、会社がどのように事業を展開し、成長していくかの計画を示す項目です。買い手候補は、M&A後の成長可能性を判断するために、以下の情報を重視します。
単に目標数値を掲げるだけでなく、目標を達成するための具体的な道筋やアクションプランを示すことが重要です。現在進行中の計画があれば、その進捗状況やこれまでの成果、計画の再現性なども明確に記載します。
具体的な事業計画を示すことで、買い手候補は買収後の経営戦略を立てやすくなり、M&Aに対してより前向きな検討を促せる可能性があります。
IMはM&Aの成否に大きく関わる重要な書類ですが、作成や提示にあたって特に注意すべき4つのポイントを解説します。
これらの注意点を守ることが、トラブルを未然に防ぎ、円滑なM&A交渉を進めるために不可欠です。
IMを作成する上で最も重要なのは情報の正確性です。誇張した表現や事実に反する内容がないか、徹底的に確認する必要があります。
買い手候補はIMに記載された情報を信用してM&Aの検討を進め、企業価値を評価します。もしIMに不正確な情報が含まれていた場合、後々トラブルに発展するリスクが高くなるでしょう。
例えば、デューデリジェンス(買収監査)の段階で虚偽が発覚すれば、交渉決裂の原因となりえます。最悪の場合、M&A成立後に損害賠償請求を受ける可能性も否定できません。
特に自社内でIMを作成する場合は、主観的な思い込みから意図せず誇張表現を使ってしまう可能性もあるため、作成後は第三者の視点も入れた精査が重要です。
IMには企業の内部情報や財務情報など、機密性の高い情報が詳細に記載されています。そのため、買い手候補企業にIMを提示する前には、秘密保持契約(NDA: Non-Disclosure Agreement)の締結が重要です。
秘密保持契約を結ばずにIMを渡してしまうと、もしM&A交渉が不成立に終わった場合に、提示した情報が競合他社に漏れたり、悪用されたりするリスクが生じます。これは売り手企業にとって計り知れない損害につながる可能性があります。
M&A仲介会社やアドバイザーを介する場合は、仲介業者が買い手候補との間で秘密保持契約を締結してからIMを開示するため安心です。自社で直接交渉する場合も、IM提示前に秘密保持契約を結び、情報の取り扱いに関して厳格なルールを定めておきましょう。
IMの作成やM&A交渉を進めていることが社内の従業員に漏れないように、情報管理を徹底することも重要です。
多くの場合、M&Aは経営層のみで極秘に進められます。もしIM作成の動きや売却交渉の事実が従業員の耳に入ると、不安や動揺が広がり、組織が混乱する可能性があります。
M&Aの噂を聞いたことにより従業員の離職が相次げば、企業価値が低下し、売却そのものが困難になることもありえるでしょう。IM作成に関する情報は、ごく一部の関係者のみで共有し、細心の注意を払って進めることが大切です。
IMはM&Aプロセスでの専門性の高い書類であり、作成には幅広い知識と経験が求められます。自社内での作成が難しいと感じる場合は、M&Aの専門家に相談・依頼することがおすすめです。
専門家は、数多くのM&A案件に関与した経験から、買い手候補に響くIMの構成や表現方法を熟知しています。客観的な視点で企業の強み・弱みを分析し、企業価値を最大化するようなIMを作成することが可能です。また、財務や法務に関する専門的な記載も正確に行えるため、情報の信頼性が高まります。
費用はかかりますが、質の高いIMを作成すると、よりよい条件でのM&A成立につながる可能性を高められるでしょう。
IMは、M&Aの初期段階で、買い手候補企業に自社の詳細な情報を伝え、買収を検討してもらうための重要な書類です。
IMの内容は、事業概要から財務状況、将来計画に至るまで多岐にわたり、正確かつ魅力的に記載する必要があります。また、情報管理や秘密保持契約の締結など、取り扱いには細心の注意を払うことが必要です。
質の高いIMを作成することは、M&Aの成功確率を大きく左右します。しかし、その作成には専門的な知識と多くの時間が必要です。
もし、IMの作成に関して不安やお悩みを抱えているなら、M&Aの専門家にご相談ください。
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