転職の年収アップ相場は?統計の読み方と提示額・希望年収の決め方
転職で年収はいくら上がるのか。「今の年収に何%上乗せすればよいか」を知りたくても、全員に当てはまる増額相場はありません。確認したいのは、応募先がその仕事に払う金額と、自分が引き受けられる役割、給与の内訳です。
厚生労働省の2025年調査では、前職より賃金が増えた転職入職者の割合は40.8%でした。ただし、これは人数の割合であり、「年収が平均40.8%上がる」という意味ではありません。本記事では統計の読み方から、600万円の現年収と二つの提示条件を比べる計算例、希望額を決める完成メモまで解説します。
- 「増えた人の割合」と「自分の増額率」を分ける。
- 求人の年収上限は、全応募者への提示額ではない。
- 総額に加え、毎月の固定収入・初年度・賞与未達の場合を比べる。
転職の年収アップ相場は?まず「増えた人の割合」を読む
年収アップの目安を探すと、増額率、増額した人の割合、増額した人だけの平均額など、異なる数字が出てきます。同じ「アップ率」という表現でも、何を割った数字かを確認しないと希望年収には使えません。
2025年は賃金が増えた人40.8%、1割以上増えた人28.2%
厚生労働省「令和7年雇用動向調査」の表6では、2025年1年間の転職入職者の賃金変動を次のように示しています。2026年10月27日に公表結果一覧を確認した時点で、最新の年計は2025年です。
| 区分 | 割合 | 読み取れること |
|---|---|---|
| 増加 | 40.8% | 対象者のうち賃金が増えた人の割合 |
| うち1割以上増加 | 28.2% | 対象者全体に対する割合。「増加40.8%」の内数 |
| 変わらない | 25.5% | 前職と比べて変わらない人の割合 |
| 減少 | 31.0% | 前職より減った人の割合 |
対象は転職入職者のうち前職が雇用者で、調査時に在籍している人。自営業からの転職入職者は含みません。一般労働者とパートタイム労働者を含む集計で、賃金変動不詳も含まれるため増加・不変・減少の合計は100%になりません。出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査」表6、公表結果一覧。
28.2%は「平均28.2%の増額」ではなく、「1割以上増加した人が対象者全体の28.2%」という意味です。この表は前職比の賃金変動区分を集計したものです。賞与込みの年収が平均いくら増えたかを示す表としては使えません。

民間調査の平均額も、対象と分母を見て読む
民間の転職サービス利用者のデータと、公的調査の対象者は一致しません。さらに「転職した人全員の平均増減額」と「増額した人だけの平均増額」は別の指標です。成功例だけを集めた記事も、あなたの成功確率には置き換えられません。
数字を見るときは、調査時期、対象の年齢・職種、サービス利用者かどうか、増額者だけか、年収と賃金のどちらかを確認してください。現在600万円の人の10%増は60万円ですが、これは割合を金額に換算した計算であって、600万円の人が通常60万円増えるという調査結果ではありません。
自分が狙う年収は、応募先の仕事と役割から確かめる
希望額を現年収の上乗せだけで決めると、応募先の採用枠とずれることがあります。先に近い仕事を並べ、同じ条件で比較できる求人に絞りましょう。
| 比べる項目 | そろえる条件 | 確認したい質問 |
|---|---|---|
| 担当する仕事 | 営業なら新規・既存、顧客規模、商材、担当工程 | 自分のどの経験が入社直後から必要か |
| 責任の範囲 | 個人担当、チームリーダー、評価権限のある管理職を分ける | 人員・予算・成果のどこまで責任を負うか |
| 給与の条件 | 基本給、固定残業代、賞与・歩合を分ける | 求人上限が適用される等級と必須経験は何か |
| 働く条件 | 勤務地、勤務時間、転勤・出社条件をそろえる | 年収差と引き換えに増える負担は何か |
例えば「法人営業650万〜750万円」という求人でも、上限がマネージャー候補を想定していれば、個人の営業実績だけで750万円を希望する根拠は足りません。部下の採用・評価を求める求人に、後輩への助言を「マネジメント経験」として提出するのも避けましょう。この金額は説明用の架空例です。
増額を考える3つの方向と、それぞれの確認点
- 経験を生かして給与水準の異なる企業へ移る:現職の顧客・工程・成果が、応募先でも必要とされるかを確認する。同業だから自動的に評価されるわけではありません。
- 責任を広げる:担当からリーダーなど、役割の変更を検討する。役職名だけでなく、期待される成果と権限、実績不足を補う体制を確かめます。
- 報酬制度を変える:成果連動の比率が高い仕事を検討する。最大年収と達成時の支給条件、未達時の固定額を分けて比べます。
未経験の業界・職種でも、顧客理解や提案、分析など生かせる経験はあります。ただし新たに学ぶ業務が多い場合、今の給与が維持されるとは限りません。「高年収の業界だから上がる」と決めず、求人の必須要件に対して自分が実行したことを一つずつ対応させてください。
関連する仕事や転職の判断については、ハイクラス転職は難しい?落ちる原因の見極め方と選考対策も参考にしてください。
600万円から660万円・720万円へ:提示額を4通りで計算する
次は同じ候補者が二つの提示条件を受けたという架空例です。年収相場や実在求人・支援実績を表すものではありません。比較はすべて税引前の額面、入社から12か月と、その後の通常の12か月でそろえます。入社前の給与、空白期間、退職金、株式報酬は計算に含めていません。
| 項目 | 現職 | A社 | B社 |
|---|---|---|---|
| 毎月の固定給×12 | 480(月40) | 540(月45) | 480(月40) |
| 通常の12か月の賞与・歩合 | 120(直近実績) | 120(標準評価時) | 240(目標達成時) |
| 通常の12か月の合計 | 600 | 660 | 720 |
| 初年度の賞与・歩合 | 比較基準120 | 60(算定期間が短い想定) | 120(算定期間が短い想定) |
| 初年度だけの入社一時金 | 0 | 30 | 0 |
| 入社から12か月の合計 | 比較基準600 | 630 | 600 |
| 賞与・歩合0、一時金なしの場合 | 480 | 540 | 480 |
この例の固定給には基本給と毎月支給が確定している手当のみを含め、固定残業代は含めません。各社の所定労働時間は同じと仮定し、別途発生する残業代も計算から除外しています。現職600万円は直近実績で、翌年も同額になる保証ではありません。賞与・歩合のゼロ想定は、下振れを比較するための仮定です。
通常年の10%増・20%増と、初年度の増額は違う
A社の標準条件は(660−600)÷600=10%増。初年度は540+60+30=630万円で、直近実績比5%増です。一時金30万円は翌年にはなくなりますが、通常の賞与120万円が出る条件なら660万円になります。
B社の目標達成時は(720−600)÷600=20%増。ただし初年度は480+120=600万円で増減なしです。歩合が出なければ480万円なので、「20%増」という総額だけでは収入の安定性は判断できません。

本人の優先条件を当てはめると、選ぶ前に確認すべき点が分かる
この候補者が「変動報酬に頼らず、毎月45万円の固定給を確保したい」と決めているなら、A社は条件を満たし、B社は満たしません。B社の提示総額が高くても、固定給の調整ができなければ今回の最低条件とは合いません。
一方、「入社から12か月で確実に650万円以上」が必要なら、A社も標準想定630万円の段階では足りません。賞与60万円は確約か、一時金の支払時期と返還条件は何かを確認し、必要額が書面で確定しなければ希望を満たしたとは扱わない判断になります。
実際の条件では、固定残業代の金額・対象時間と超過分の扱い、試用期間の給与差、初回賞与の対象期間、入社一時金の返還条件も確認してください。家計への影響から受諾基準まで詳しく整理したい場合は、転職で年収が下がる場合の判断方法も参考になります。
希望年収と最低条件を分けて書く:完成メモの例
本人が受け入れられる最低条件は生活や働き方から決めるもの、応募先への希望額は仕事・評価条件に対する提案です。最低条件を決めても、その金額で採用する義務が企業に生じるわけではありません。両方を分けて持つと、応募先選びと条件相談が具体的になります。
| 欄 | 記入した内容 |
|---|---|
| 現状 | 直近年収600万円。固定480万円、賞与実績120万円。法人営業5年。既存顧客の更新提案を担当。 |
| 希望 | 通常の12か月で700万円を希望。求人の架空レンジ650万〜750万円内で、更新提案に加え導入後の利用拡大を担う枠を検討。上限750万円を当然の提示額とは考えない。 |
| 自分の最低条件 | 固定給年540万円(月45万円)、固定残業代は別。初年度の見込総額も600万円以上。勤務時間・勤務地を変えないことを優先。 |
| 希望額の説明材料 | 担当20社のうち各年に更新期限を迎えた既存15社が対象。2024年は12社更新/15社=80%、2025年は14社更新/15社=93.3%(約93%)。同一契約期間・同じ顧客規模の区分で比較するが、同じ15社を追跡した値ではない。自分は利用状況の確認、解約理由の分類、提案改訂を実行。2025年の価格改定と製品機能追加も影響し、価格の決裁は上司。自分の施策だけの効果とは断定しない。 |
| まだ確認が必要な点 | 700万円はどの等級・成果を想定するか。更新提案の経験をどう評価するか。初年度賞与と固定給は書面でいくらになるか。 |
数値・経歴・求人レンジはすべて説明用です。実際には本人の資料で確認できる実績を記入し、顧客名などの機密情報は伏せます。更新率の比較には対象顧客の違いなどが影響します。この実績例だけで700万円が妥当と証明できるわけではなく、応募先の評価・等級との照合が必要です。
この例ではA社の660万円は希望700万円には届きませんが、固定540万円・初年度630万円という想定は最低条件を満たします。ただし賞与等が未確約なら、その確度を確認してから判断します。B社は720万円でも固定額の最低条件を満たさないため、総額だけで優先しません。
面接や条件相談では「前職より上げたい」に加え、担える仕事と、希望額の前提を伝えます。交渉する時期や伝え方、提示後の相談文は、転職の年収交渉の進め方で解説しています。
年収エージェントに相談する前に用意するもの
年収エージェントでは、営業・IT・マーケティング・コンサルなど各領域のキャリアコンサルタントが、職務経歴書の添削、面接対策、企業との条件交渉をサポートしています。公開プロフィールには、人材・IT・不動産領域などの支援経験を持つ村井亮介や、営業・エンジニア・マーケター・人事・経理財務などの支援経験を持つ森田真人を掲載しています。
出典:年収エージェント公式サービス・キャリアコンサルタント紹介(2026年10月27日確認)。
相談前には、次の4点を整理しておくと話を進めやすくなります。
- 現在の給与内訳:固定給、固定残業代、賞与実績、歩合、一時金を分ける。
- 自分が担った仕事:実行したこと、責任範囲、成果の期間・対象数をまとめる。
- 比較したい求人:仕事内容と給与条件を保存し、自分の経験が使えそうな点を添える。
- 希望と最低条件:通常年の希望額、固定収入の下限、初年度に必要な金額を分ける。
応募先がまだ決まっていない段階でも、どの経験を評価材料にできるかを整理できます。登録フォームには「情報収集したい」という選択肢もあります。担当領域や紹介できる求人は相談時に確認してください。年収の増額や求人紹介を約束するものではありません。
転職の年収アップ相場についてよくある質問
年収100万円アップを希望するのは高すぎますか?
一律には判断できません。400万円からなら25%増、800万円からなら12.5%増です。増額幅だけでなく、応募先の給与レンジ、任される責任、生かせる経験、固定・変動給の構成を確認してください。企業の上限を超える場合は、言い方を変えるだけで届くとは考えず、応募する枠や希望条件を見直します。
20代・30代・40代で狙う増額率を変えるべきですか?
年齢だけで希望額を決めるのは避けましょう。統計の年代別割合は、それぞれの年代の転職先や雇用形態なども混ざった結果です。同じ年齢でも、未経験の仕事か、専門性を生かす仕事か、管理責任を担う仕事かで条件は変わります。
求人に「年収600万〜900万円」とあれば900万円を希望できますか?
希望を伝えることはできますが、上限額が自分にも適用されるとは限りません。複数等級をまとめた募集か、賞与・歩合込みか、上限に必要な経験は何かを確かめましょう。提示が600万円でも低評価とは限らず、想定される役割と金額の対応を聞くと判断できます。
現職に残る場合とも比べたほうがよいですか?
比べたほうが判断しやすくなります。現職で決まっている給与改定は反映し、未確定の昇進・昇給は期待として別に置きます。転職先の標準賞与も同様に確定額と分け、両方を同じ12か月の条件で比べてください。
相場の数字を、自分の条件を確かめる出発点にする
転職で年収を上げるには、増額者の割合をそのまま自分に当てはめず、応募先の役割と給与条件を確かめることが大切です。まず現在の給与を分解し、希望年収と最低条件を別に書いてください。そのうえで、提示額の固定・変動、初年度・通常年を計算すると、自分にとっての増額を判断できます。