TOP TOP

生産計画DX事例:生産計画をシステム化したら、属人性が解消されて生産性も上がった

更新日
人見悠大

この記事の著者

人見悠大

人見悠大

業務改善とシステム×AIで利益を最大化

2016年にシンプレクス株式会社入社後、金融トレーディングシステムの開発・運用に従事し、同社最年少でPMに昇格。
複数の大型案件で品質・納期・利益をすべて達成し、金融機関向けITコンサルタントも兼任。
PM/PMO支援とシステム開発を軸に、利益創出に直結するDX支援を提供。
上流から運用保守まで一貫した開発体制を強みとし、金融・行政・製造など幅広い業界のDXプロジェクトを成功に導いている。

はじめに

製造業の生産計画業務におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の成功事例をご紹介します。

本記事では、インクカートリッジ製造を手掛けるある中堅メーカー(ジット株式会社)のケースをもとに、従来Excelに頼っていた生産計画をシステム化し、属人化の解消や計画業務時間の大幅短縮、さらには日次ローリングによる柔軟な計画運用を実現したプロジェクトの経緯と成果を解説します。

IT専門知識のない経営者の方でも理解しやすいように、現場の具体的なプロセスに沿って噛み砕いて説明します。現状の課題に心当たりがある経営者の方は、ぜひ自社の改善ヒントとして読み進めてください。

導入前の状況:Excel中心で属人化した生産計

まず、システム導入前の生産計画業務の状況を整理します。対象企業では、生産計画はExcelとERP(基幹システム)の併用で行われており、一人のベテラン担当者に大きく依存していました。主な課題は次のとおりです。

  • 属人化・担当者依存

    生産計画の立案は特定の担当者の経験則に頼っており、Excel上に散りばめられた複雑な計算式や判断基準が暗黙知化していました。他のメンバーが代替しようとしても、何をどう計算しているかブラックボックスになっており、担当者不在時には計画を回せないリスクがありました。
  • Excel中心による非効率

    1600品目近い製品データを扱い、複数の生産ラインごとにシートを分けて計画を組むという作業を毎月手作業で行っていたため、月次計画の立案だけで数日がかりになるほど多大な時間と工数を要していました。

    また日々の需要変動に対応する微調整もすべてExcelで実施しており、担当者は「特段難しいことはしていないのにとにかく時間がかかる」と強く負担を感じていました。
  • リアルタイム性の欠如

    基本的には月初に1ヶ月分の計画を立て、その後に需要の急変があればその都度Excel上で計画を組み替え、ERPに再入力していました。この後追い調整では即応性に限界があり、計画の更新頻度・柔軟性にも限界があります。「日々運用できるよう分散して色んな人にやらせる」仕組みもなく、結局属人的な対応になっていました。
  • 計画精度・効率の課題

    現行のExcelベース手作業では、需要予測や在庫、水準、生産順序の最適化など複雑な組み合わせ計算を瞬時に試すことは困難です。

    例えば「生産順序を入れ替えて段取り時間を削減する」「在庫水準と生産頻度のバランスを最適化する」といった高度な調整は属人的な勘に頼る部分が大きく、結果として計画が必ずしも全体最適になっていない可能性がありました。
  • 情報漏れ・反映モレのリスク

    Excelでの管理は人為ミスのリスクもはらみます。たとえば人員シフト情報や最新在庫状況が計画に反映されないケースも起こり得ました。現状では生産計画立案時に「誰がどの作業ができるか」「人員数の制約」は考慮されず計画を組み、後から現場からのフィードバックで修正する運用でした。

    また在庫についても、Excel上で安全在庫を考慮しながら在庫推移をシミュレーションしていましたが、担当者の手作業ゆえにデータ反映漏れやミスのリスクが常に存在しました。

以上のように、Excelに依存した属人的プロセスは非効率かつ不安定であり、経営的にも「このままではまずい」という危機感がありました。

そこで同社では、生産計画業務のDXに着手し、「属人化の解消による標準化」と「計画策定時間の大幅短縮」を最優先課題としてシステム導入による解決を目指すことになりました。

なぜパッケージではなくフルスクラッチ開発を選択したのか

生産計画のシステム化にあたり、一つの論点となったのが「既製パッケージソフトの導入」と「自社向けフルスクラッチ開発」のどちらを選ぶかでした。結果として同社は後者を選択しますが、その理由は以下の通りです。

  • 独自業務への適合性

    同社の生産形態や計画ロジックは自社の製品・ライン構成に最適化された独自のものです。市販の生産スケジューラやERPオプションでは細かな部分で業務とのフィットに懸念がありました。無理に既製ソフトに合わせると現場に負荷がかかったり、結局カスタマイズ費用が膨大になったりする恐れがあったのです。

    そこでスクラッチ開発なら自社業務にぴったり合ったシステムを構築でき、独自ノウハウを余すところなく活かせると判断しました。また標準ツールへの無理な業務合わせによる非効率も避けられます。
  • コスト・期間の合理性

    大規模なパッケージ導入はソフトウェアライセンス費やカスタマイズ開発費、さらに従業員トレーニングなど見えないコストも含めて高額になりがちです。

    それに対し、今回採用したGoogleスプレッドシート+Google Apps Scriptによる開発手法は、既存のクラウドサービスを活用することで必要最低限の機能を短期間・低コストで実現できました。

    実際、本プロジェクトは要件定義から初期稼働までわずか数ヶ月程度の開発期間で完了し、費用も数百万円規模(パッケージ導入の数分の一)に抑えています(※規模感はプロジェクト内容によります)。
  • 現場の受容性(使い慣れたUI)

    新システムのユーザーとなる生産計画担当者は必ずしもITリテラシーが高くありません。使い慣れたExcelライクなインターフェースで操作できることは大きなメリットでした。

    今回、専用のWeb画面開発は行わずにGoogleスプレッドシートをそのままユーザーインターフェースとして利用する方針としました。ブラウザ上で開くスプレッドシート上で全ての操作が完結するため、ユーザーは新たなソフト習得に悩むことなく移行できました。

    このように現場になじむ形でシステムを提供できる点もスクラッチ開発の利点でした。
  • 拡張性と自社内製可能性

    Google Apps Scriptを用いた実装はJavaScriptベースで比較的平易なため、将来的に自社内のIT担当者がスクリプトを修正・拡張するといったことも可能です。パッケージにロックインされることなく、自社の裁量で機能追加できる柔軟性も評価しました。

以上より、「自社の課題に最適な解」をスピーディーに得る手段としてフルスクラッチ開発によるDXに踏み切ったのです。

システム化で何をどう変えたのか – 業務フローの改善

では、実際にどのように業務フローを変えたのか、新システム導入後の生産計画プロセスを具体的に見ていきます。新システムでは日次ローリングによる計画立案を核に、受注・在庫データの取り込みから生産計画の自動計算、現場調整、そしてERPへの反映までを一連のサイクルとして回すようにしました。

ポイントは「自動化できる部分は極力自動化し、必要な最終調整のみ人手に委ねる」というメリハリです。以下に日次で実施するフローをステップごとに説明します。

新システムにおける日次生産計画フロー

STEP1:受注データの抽出(毎日)

毎営業日の朝、まず最新の受注情報をERPからCSV形式でエクスポートします。当日以降の全受注データ(確定受注の品目コード、数量、納期など)が対象です。この処理は従来からERP上で行っていた月次データ抽出を日次サイクルに置き換えたものです。

STEP2:在庫データの抽出

続いて、最新の製品在庫残高もERPからCSV出力します。各製品の現在庫数や安全在庫情報を取得し、計画立案時に過剰生産を防ぐための基礎データとします。

STEP3データ取込(自動)

上記で出力した受注CSVと在庫CSVのファイルを所定のGoogleドライブフォルダにアップロードすると、それをトリガーにGoogle Apps Scriptのバッチ処理が動き、両CSVを読み込んでスプレッドシート内の「受注データ」シートおよび「在庫データ」シートに最新情報を転記します。

この取込処理は毎日早朝の定時にも自動実行されるよう時間トリガー設定しており、担当者が出社する頃には当日以降の新データがシートに反映されている状態を作ります。

STEP4:生産計画の自動立案(自動)

データ取込完了後、続けてApps Scriptが計画立案アルゴリズムを実行し、各製品の推奨生産日程・生産数量を自動計算します。

アルゴリズムは受注要求を満たすことを第一目的に、需要予測・受注量、現在庫、安全在庫、ロットサイズなどの情報から各日の生産スケジュール案を生成します。この際、敢えて人員や設備のリソース制約は考慮せずに計算し、「需要に対応するには本来これだけ作る必要がある」という理想ベースのスケジュールを出すのがポイントです。

こうすることで、まず需給バランス上最も合理的な生産量が提示され、属人的なバッファや抜け漏れのない客観的な計画案が得られます。

STEP5:生産計画案の確認・調整(人手)

自動算出された計画案はそのままでは人間側の制約を無視しているため、ここで生産計画担当者(プランナー)が内容を確認し、必要な修正を加えます。具体的には、現場の状況(各ラインの稼働状況、作業者の技能やシフト、設備メンテ状況など)や調達リードタイムなどを踏まえ、実行可能なスケジュールに調整します。

例えば「この日は人手が足りないのでA製品の生産日を翌日にずらす」「こちらのラインはメンテ日なので別ラインに振り替える」といった微調整です。自動計算により骨子の部分(需給バランス)は最適化されていますので、担当者は例外対応的な調整に専念でき、計画策定の作業負荷は大幅に軽減します。

STEP6:生産計画データの出力

担当者による調整後、確定した日次生産計画をERPに反映するためCSVファイルにエクスポートします。Googleスプレッドシート上にメニュー操作でCSV出力を行うスクリプトを用意しておき、ワンクリックで当日以降の計画をCSV形式でダウンロードできるようにしました。

なおこの出力処理はあえて自動バッチには組み込まず、担当者の手動操作(判断)で実行するようにしています。人間のチェックを経ずに自動で計画が確定反映されてしまうことを避けるためで、計画担当者が「問題なし」と判断したタイミングで出力する運用です(将来的には承認フロー付きの自動化も可能です)。

STEP7:ERPへの計画反映

最後に、出力された生産計画CSVをERPの所定画面でインポートします。これによりERP上の製造オーダー/スケジュールが更新され、現場(製造ライン)には最新計画が展開されます。ここまでで一連のサイクルが完了し、あとは日々この手順を繰り返すことで日次ローリングによる計画更新運用を回していきます。

CSVファイルの受け渡しは自動連携ではなく担当者のオペレーションに依存する構成ですが、逆に言えば既存ERPを改修することなく連携できる利点でもあります。多少の手間は発生しますが、日々のルーチンとして定着すればさほど負担にはなりません。

以上が新システムで実現した日次の計画フローです。ポイントは「毎朝最新データで計画を自動計算し、人手で微調整して即ERP反映」というサイクルを確立したことにあります。特に、これまで月1回だった計画立案を日次サイクルに転換したことで、現場対応力が飛躍的に向上しました。

また技術面では、Googleスプレッドシートを主要なデータストア兼UIとして活用し、Apps Scriptで自動処理を実装した点が特徴です。スプレッドシート上には「受注データ」「在庫データ」「生産計画案」「マスタ設定」など複数のシートがあり、ユーザーはブラウザからそれらを閲覧・編集します。Apps Scriptのコードは当該スプレッドシートファイルに紐づいて保存されており、定時実行やメニューからの手動実行を組み合わせて業務ロジックを実装しました。

このように既存の表計算ツールをそのまま操作画面として使えるため、開発コストを抑えつつユーザビリティも確保できています。

現場の反応と変化:属人性からの脱却と業務改善

システム導入後、現場(生産管理担当者および製造ライン側)にはどのような変化があったのでしょうか。

まず、生産計画担当者(プランナー)の反応です。導入当初こそ「本当に自動計算に任せて大丈夫か」という不安もありましたが、自分がこれまでExcelで行っていた計算ロジックがそのままシステムに再現されていること、そしてシステムが提示する計画案は需要と在庫のバランスが取れた合理的なものであることを確認し、すぐに信頼を寄せるようになりました。

むしろ「もっと早く欲しかった」という声が出たほどで、特に面倒なデータ集計や需給計算をしなくてよくなった点は大きな解放感につながりました。担当者は計画微調整と関係各所との調整コミュニケーションに集中できるようになり、「作業に追われる状態から、考える余裕が生まれた」とのことです。

属人化していたノウハウがシステム上に見える化されたことで、同僚への引き継ぎやチーム内の情報共有もスムーズになりました。「もし担当者が交代しても、これなら回る」という安心感が組織に生まれたのは大きな成果です。

製造現場(ライン長や作業者側)からもポジティブな反応が得られています。従来は月間計画が途中でしばしば変わるとはいえ、タイムリーさに欠けていたため現場から見れば計画と実態にズレがある状態も起こっていました。

例えば急な追加受注があっても、生産計画がすぐには反映されないため直前になってバタバタとライン変更…といった経験もあったようです。それが日次ローリング運用に変わったことで、「毎朝最新の計画がERPに反映されている」状態となり、現場は常にアップデートされた指示をもとに段取りできます。

計画変更が日課として定着したことで、「想定外の変更」に振り回されることが減り、結果として納期遵守率の向上にもつながりました(急なオーダーにも計画が即座に対応するため、納期遅れが発生しにくくなった)といいます。

また、新システム導入をきっかけに部署間の協力体制も強化されました。生産計画が常に最新化され共有されることで、製造部門と営業・受注担当との間で「今このオーダーを入れるといつできるか」のコミュニケーションが取りやすくなりました。営業は毎日一定時刻までの受注が翌日以降の計画に反映されることを理解しており、計画担当者もその締切を基に業務を進めています(いわゆる受注のカットオフ時間を明確化)。

これにより、「受注が来たから現場に無理を言って今日中に生産してくれ」といった属人的な調整依頼が減り、ルールに基づく安定運用が定着しました。資材調達部門も、日次計画に合わせてERP上で毎日MRPを回す運用を取り入れるなど、全社的にサプライチェーンの動きを細かくキャッチアップする流れが生まれています。

総じて、現場からは「計画業務がブラックボックスでなくなり、組織として運用できるようになった」「データに基づいた計画なので説明もしやすく、現場の納得感が高い」「頻繁な計画見直しにもシステムがサポートしてくれるので精神的余裕ができた」といった声が聞かれています。属人化からの脱却により生まれた効果は、単に効率が上がっただけでなく現場のマインド面の安定や信頼関係の向上にも及んでいるようです。

導入後に得られた定量的な成果

次に、導入後に得られた具体的な成果を定量的な面から整理します。

  • 生産計画立案の工数50%削減

    最大の成果は、計画担当者の業務負荷が劇的に減ったことです。従来は月次計画策定に数日を要し、さらに日々の調整にも時間を取られていましたが、システム導入後は計画立案作業時間が約半分以下に短縮されました。

    例えば月初の計画策定期間は従来比で50%減となり、空いた時間を他の付加価値業務に充てられるようになりました。
  • 納期遵守率の向上

    日次で計画を見直す体制になったことで、需要変動への対応遅れによる納期遅延が減少しました。その結果、製品の納期遵守率(オンタイム出荷率)が改善しています。

    具体的な数値は公表できませんが、現場感覚として「ほぼ全てのオーダーを約束通りの納期で届けられている」という状態です。急な追加注文にも柔軟に生産計画を組み替えられるため、顧客対応力が増し、信頼性向上にも寄与しました。
  • 在庫適正化と生産性アップ

    自動計算される計画は、安全在庫を下回る不足や過剰生産を未然に防ぐロジックが組み込まれており、結果として不要な在庫積み増しの抑制につながりました。必要なものを必要なときに作る計画が立てやすくなったことで、平均在庫日数の低減や在庫回転率の改善が見られています(在庫管理コストの削減にも効果が期待できます)。

    また、計画の精度が上がり段取り替え回数の削減やまとめ生産の最適化が図られた結果、製造ラインの稼働効率も向上しました。実際に日産ベースの生産数量が若干増加するなど、生産性指標にもプラスの変化が出ています。
  • 標準化によるリスク低減

    属人化した業務が体系化されたことで、担当者の交代や引継ぎに伴うリスクが大きく低減しました。「この人しか計画を回せない」という状態から脱却し、複数担当者で協力して日次運用を回せる体制が整ったことは、組織運営上の安心材料となりました。

    また新人や他部署への教育コストも下がり、仮に担当者が不在でも計画サイクルを止めずに済む点は経営者にとっても大きなメリットです。
  • データ活用の土台構築

    スプレッドシート上に全ての計画関連データが蓄積されていく仕組みになったことで、過去データの分析や需要予測精度の検証が容易になりました。

    例えば「どの製品がどのタイミングで計画変更になったか」「予測と実需の乖離はどの程度あったか」といった振り返りをデータドリブンで行えるようになり、今後のさらなる計画精度向上サイクル(改善のPDCA)に繋がっています。

以上のように、本プロジェクトは生産計画業務そのものの効率・精度向上だけでなく、周辺業務や経営指標にも好影響を与える結果となりました。特に計画担当者の負荷軽減と生産現場の柔軟性向上という両面で成果を出せたことは、DX投資のROI(投資対効果)としても十分評価できるものです。

一般的な導入との違い・苦労したポイント

本ケースは市販パッケージではなく自社特化のスクラッチ開発で成功を収めましたが、その過程ではいくつか一般的なシステム導入とは異なる工夫や苦労もありました。

STEP1:暗黙知の形式知化が最大の山場

属人化業務のDXでは避けて通れませんが、やはり一番のポイントは「人の頭の中にあるロジックを如何に引き出してシステムに落とし込むか」でした。生産計画担当者が長年培ってきた勘所や計算ルールを、開発者がヒアリングと現行Excel解析を通じて紐解き、それをアルゴリズムとして定義していく作業です。

例えば「どの製品を優先して生産するかの判断基準」「在庫が何日分切ったら増産に踏み切るか」といった属人判断を明文化し、計算式やフロー図で表現して初めてプログラミング可能になります。この要件定義作業には現場担当者の協力が不可欠であり、プロジェクト序盤の要件すり合わせ(現行分析とTo-Be業務像の策定)に十分な時間を割きました

幸い担当者の協力意欲が高く、自分の知見がシステムに再現されることへの期待もあってスムーズに進みましたが、ここがうまくいかないと「せっかくシステムを入れたのに役に立たない」という事態にもなりかねません。裏を返せば、現場の知恵を凝縮したシステムだからこそ現場にフィットし成功したとも言えます。

STEP2:人間とシステムの役割分担の割り切り

前述のとおり、本システムでは自動化と人間の判断をバランスさせる設計を採りました。高度なパッケージであれば人員シフトや設備メンテナンス予定まで全部織り込んで完全自動スケジューリング…といったことも可能かもしれません。しかしそれを目指すと非常に複雑な最適化問題となり、開発コストも膨大になります。

そこで本プロジェクトでは「需要対応の部分は機械に任せ、最終調整は人間が担う」という割り切りをしました。自動計算ステップではリソース制約を一旦無視することでアルゴリズムを簡素化し、高速処理を実現しています。一方、現場の人手や設備都合といった数値化しにくい部分は人が目で見て調整する

このアプローチにより、80点の計画を数分で出し、残り20点分を人が仕上げるという実用的な解に落とし込めました。結果として「自動化率100%」にこだわらない分スピーディーに効果を出せ、現場も役割分担を明確に理解できたため混乱も生じませんでした。

STEP3:既存リソースのフル活用とシンプルな連携

システム間連携については、敢えてリアルタイムなAPI連携は行わずCSV連携に留めた点が特徴です。

一般的にはシステム導入となると「ERPと新システムをAPI連携しよう」「自動で双方向連携させよう」と考えがちですが、中小企業の場合そこまでやると費用対効果が合わないことも多々あります。本ケースでは人がCSVを介して橋渡しする方式としましたが、これで実運用上特に大きな問題は起きていません。

むしろ担当者が自らデータを確認・投入するプロセスがあることで、「知らない間にデータが勝手に同期されていつの間にか計画が変わっていた」という不安もなく、現場的には安心感があったようです。必要最低限の自動化に留めたことでシステムがブラックボックス化しなかった点も良かったと言えます。

STEP4:低コスト開発ゆえの技術的制約への対処

Google Apps Script+スプレッドシートでの実装は手軽な反面、実行時間やデータ量に一定の制約があります。他のクラウドサービスと比べ高速な処理は得意ではなく、複雑な最適化計算をさせるには不向きです。本プロジェクトでも、当初はごく簡単なヒューリスティック(経験則ベース)の計算法からスタートし、必要に応じて段階的にロジックを高度化していきました。処理時間が長くなりすぎないようアルゴリズムを工夫し、計算量を削減する取組も行いました。

その甲斐あって、1600品目規模でも数分以内に日次計画案を生成できています。もし将来さらなる高度化が必要になった場合でも、まずは現状動いて価値を出しているという状態を確立できたことは大きいです。「完璧を追求するより、まず動くものを作り、小さく改善を重ねる」姿勢が奏功した例と言えます。

以上が、導入プロジェクトを通じて見えた一般論との違いや苦労ポイントです。まとめると、現場ノウハウ重視のシステム設計、自動化と人手の適切なハイブリッド、過度に凝らないシンプル連携、そしてスモールスタートで徐々に改善――これらが中小製造業のDXを成功させる鍵だと分かりました。

他社にも応用できる即実行可能なノウハウ

本事例から得られた知見には、他の製造業様でもすぐに活かせるヒントが多数あります。最後に、経営者の方に向けて即実行可能なノウハウをいくつか提言します。

  • 属人化打破の第一歩は「見える化」

    まず着手すべきは、特定の担当者だけが把握しているルールや計算方法を洗い出し、誰でも理解できる形でドキュメント化・ツール化することです。Excelの計算式やマクロ、担当者の頭の中の判断基準を棚卸ししてみましょう。それ自体が業務改善の第一歩になります。本ケースでも、現行業務を構造化しフロー図に落としたことから課題整理が進みました。
  • 小さく始めて効果を検証

    DXと聞くと大掛かりなシステム導入を想像しがちですが、まずは部分的な自動化から小さく始めるのがおすすめです。例えば今回のように「受注と在庫データを毎朝自動でまとめ、計画の下地を作る」だけでも効果は絶大です。そこから得られた時間で更に改善策を練るというポジティブな循環を作りましょう。一気に全自動を目指す必要はありません。
  • 既存ツールを賢く活用

    新たなソフトを買わずとも、Excelやスプレッドシート、マクロやスクリプトといった手元の道具でできるDXは多く存在します。

    例えばGoogleスプレッドシート+Apps Scriptであれば、プログラミング経験が多少あれば個人でもプロトタイプを作れますし、社内IT担当者が改善することも可能です。クラウド上でスクリプトを定時実行すれば、人が働いていない深夜・早朝にも自動で仕事をしてくれるわけです。

    まずは「手作業で毎回やっているデータ転記を自動化する」など、身近なところから試してみる価値があります。
  • ERP連携は段階的でOK

    ERPなど既存システムとの連携は、何もリアルタイム双方向にこだわる必要はありません。CSVインポート/エクスポートによるバッチ連携でも十分に回ります。むしろ人が介在することでデータ検証ができ安心な面もあります。

    最初は手動連携で始め、問題がなければ徐々に自動化していくという段階アプローチで十分です。「まず動くものを作り、それから良くしていく」というマインドセットを持ちましょう。
  • 計画サイクルとルールの明確化

    システム導入と同時に、業務プロセスのルールづくりも重要です。

    例えば「受注は毎日○時までに確定する」「計画は2営業日先まで確定とし、それ以降は日次でローリングする」といった運用ルールを予め決め、関係者に周知します。本事例でも、直近数日は計画を凍結しそれ以降を更新対象とする運用を敷くことで現場の混乱を防ぎました(計画確定ロック期間の設定)。

    こうした運用ルールとシステムをセットで設計することが成功のポイントです。
  • 現場巻き込みとトレーニング

    DXは現場の理解と協力なしには成しません。計画担当者や製造ラインの声を聞きながら、「この部分が楽になります」「ここはこう改善されます」と丁寧に説明し、一緒に作り上げる姿勢が大切です。

    導入前後には充分なトレーニング期間や試行運用期間を設け、現場が安心して新システムに移行できるよう配慮しましょう。現場が主役となってDXを推進することで、定着率も効果も格段に高まります。

以上、すぐに実践できるポイントを挙げました。中小〜中堅規模の製造業でも、アイデア次第で安価かつ短期間に業務改善を実現できることがお分かりいただけたかと思います。

本事例のように、自社の実情に即したDXに取り組めば、属人化の解消や生産性向上といった確かな成果を得ることができます。

ぜひ自社の状況を振り返り、できるところからDXの一歩を踏み出してみてください。あなたの会社の生産計画業務にも、きっと改善の余地とチャンスが潜んでいるはずです。

Webのプロに無料相談

※個人の方は「個人」とご記入ください。

※社内コンペシステムとは?

社内コンペシステムについて

「StockSunに相談すれば、複数の高品質なWebコンサルタントを比較検討できる」このような理想を実現するために設けた制度です。

お問い合わせ複数パートナーをご紹介提案をもらいたいパートナーを選択パートナーからご提案契約締結

(複数選択可)

選択してください

お問い合わせ項目

閉じる

上限予算必須

※一営業日以内にご案内いたします。弊社は無料相談で3つ以上の具体策のご提示を心がけております。

フォームの送信をもって
プライバシーポリシーに同意したものとします。






まずは無料で相談する
プロに無料相談をする

お仕事のご依頼・ご相談

各Web領域に精通したコンサルタントに無料でご相談可能です。デジマ支援は「日本一競争が激しいStockSun」にお任せください。

会社資料のダウンロード

まずは社内で検討したい方、情報取集段階の方はご自由にダウンロードください。非常識な営業等はございませんのでご安心ください。